「ほら。コレだろ?」

橙色のヘッドがついたペンダントを差し出すと、少女は夢中で奪い取った。

些か乱暴な所業に驚いたが、安心したように瞳を伏せた姿を見たら何も言えない。

熱砂の中を走っていたジープは、カシュラーンの城門を出てしばらく進むと、すぐに回れ右をした。

車体は都を囲う城壁に沿うように走行し、こんもりとした砂丘を下ると白い岩石などで人工的に作られた丘の谷間の先の、ポッカリと空いたアーチ型のトンネルに入って行ったのだ。

「ありがとう。どうしてお前が持ってたの?」
「知らねぇよ。気が付いたらポケットに入ってたんだ」

薄暗いホールには大勢の人間がいた。

老若男女問わず、総勢百名は下らないだろう。

群集の中心で視線を集めるのは、場所が場所だけに落ち着かない。

アーチのトンネルを進んだ先は、レジスタンスのアジトだった。

開発が放棄された地下通路を利用しているらしいが、さほど蒸し暑くはない。

「そっか、すごく大切なものだったんだ。本当にありがと」

ラキと名乗ったオレンジ髪の少女は、満面の笑みで衣織に頭を下げた。

「別にいいって。つーかさ、なんで俺らこんな所まで、連れて来られなきゃ行けないんだよ」

売ってしまおうと思っていただけに、何度もお礼を言われるのは少々心持ちが悪い。

苦笑交じりで応じた後、衣織は一番聞きたかったことを質問した。

襲撃にあったためについて来てしまったが、彼らのアジトに足を踏み入れたのは確実に不味かった。

猛烈に嫌な予感がする。

「お前らに、レジスタンスに入って欲しいんだ」
「嫌だ」

衣織は間髪入れずに拒否を示した。

今日も素晴らしく冴えている己の勘が、なんだか泣きたい気持ちにさせる。

「な、なんでっ!」

少年の即答にラキは慌てて身を乗り出した。

動揺を隠そうともしないところから、彼女の裏表のない性格が見て取れる。

「ラキ、何の説明もなしにいきなり頼んでも、彼らだって承諾できませんよ」

少女の傍らに立っていた眼鏡の青年が、呆れたようにこめかみを押さえる。




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