「どうする?」

傍らに来ていた雪に問われ、衣織は銃のグリップを握り直した。

男たちの言う「レジスタンス」に心当たりはまるでなかったが、「一般人です」とアピールする猶予が与えられないことは、彼らの殺気立った雰囲気から容易に想像出来た。

適当にいなして逃走するのが得策か。

冷静に判断を下し一歩を踏み出そうとした衣織は、ジャケットの袖を引っ張られて目を見開いた。

「乗って!」
「はい?!」

またもや素っ頓狂な声を上げてしまうが、少女が無理やりに背中を押して、衣織をジープに押し込んでしまった。

それに続いて雪と少女も後部座席に乗る。

「出してっ」

急発進したジープには、少女と運転手しか乗っていなかったようだ。

リベンジに来たわけではなかったことを確認しながら、衣織は追い縋る茶色の群れに何発か威嚇射撃を見舞ってやる。

雪の手が翻った途端、地が盛り上がり追っ手との間には高い壁が出来上がった。

ジープはけたたましいエンジン音を発し、スピードを緩めることはない。

「なぁ、俺らどこに連れてかれるわけ?」

差し迫った危機から脱すると、衣織は今更ながらの質問を口にする。

答えが与えられたのは、カシュラーンの城門飛び出してから。

顔に巻きつけていた布を剥ぎ取ると、元気なオレンジ髪の少女がニカリと笑った。

「アタシたちのアジトっ」
「え……」

思わず絶句してしまったけれど、もうすべては後の祭りだった。




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