□
「どうする?」
傍らに来ていた雪に問われ、衣織は銃のグリップを握り直した。
男たちの言う「レジスタンス」に心当たりはまるでなかったが、「一般人です」とアピールする猶予が与えられないことは、彼らの殺気立った雰囲気から容易に想像出来た。
適当にいなして逃走するのが得策か。
冷静に判断を下し一歩を踏み出そうとした衣織は、ジャケットの袖を引っ張られて目を見開いた。
「乗って!」
「はい?!」
またもや素っ頓狂な声を上げてしまうが、少女が無理やりに背中を押して、衣織をジープに押し込んでしまった。
それに続いて雪と少女も後部座席に乗る。
「出してっ」
急発進したジープには、少女と運転手しか乗っていなかったようだ。
リベンジに来たわけではなかったことを確認しながら、衣織は追い縋る茶色の群れに何発か威嚇射撃を見舞ってやる。
雪の手が翻った途端、地が盛り上がり追っ手との間には高い壁が出来上がった。
ジープはけたたましいエンジン音を発し、スピードを緩めることはない。
「なぁ、俺らどこに連れてかれるわけ?」
差し迫った危機から脱すると、衣織は今更ながらの質問を口にする。
答えが与えられたのは、カシュラーンの城門飛び出してから。
顔に巻きつけていた布を剥ぎ取ると、元気なオレンジ髪の少女がニカリと笑った。
「アタシたちのアジトっ」
「え……」
思わず絶句してしまったけれど、もうすべては後の祭りだった。
- 69 -
[*←] | [→#]
[back][bkm]