翔の台詞に僅かなショックを受けて、けれど彼を困らせたくないために、必死で無表情を取り繕う。

それでも膝の上で握り締めた両の手が震えてしまい、心の動揺は青年に伝わってしまった。

優しく微笑むと、翔はラキの小さな頭を壊れ物を扱うかのように、そっと撫でてやった。

「ラキは鈍感ですね」
「翔?」
「それとも、ワザとですか?」

彼が何を言いたいのか、よく分からない。

分からないからこそ、自分の都合のいいように解釈してしまいそうで。

僅かにパニックに陥ったラキに、彼自身こそ壊れてしまいそうな儚げな美貌を誇る男の顔が、ゆっくりと近づいて来る。

条件反射のように目蓋を閉じたラキは、訪れるであろう甘美な衝撃に胸を高鳴らせた。

だが、その衝撃が少女を襲うことは終ぞなかった。

「ラキ、ペンダントはどこですか?」
「え?」

翔の言葉を理解するや否や、ラキは慌てて自身の胸元に手をやった。

「ない、うそ!?ペンダントが、ないっ!」

瞬く間に青ざめる少女は、焦燥に駆られた様子で彼を見つめた。

常に首から下げていたそれは、今は亡き父から貰った誕生祝いの品。

自身のお守りとして、肌身離さずにいたのに。

「どこかに落としたのかもしれないっ」
「落ち着いて。襲撃の時にはあったんですか?」
「あった、と思う。けど」

確かにあの旅人二人を襲撃したときにはあったはずだ。

しかし、帰りはどうだったか。

「撤退するとき、なかったかも。砂漠……砂漠に落としたかもしれないっ」
「砂漠ですか。見つけるのは大変そうですね」

あの砂海の中からペンダントを探すなど、不可能に近い。

絶望に瞳を震わせるラキは、はっともう一つの可能性を思いついた。

望みは限りなく薄い。

けれど、僅かばかりの希望に縋らずにはいられなかったのだ。

「翔、もしかしたら」
「どうかしましたか?」

ラキは赤茶の眼を見開いて言う。

「あの二人が持っているかもしれないっ!!」




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