一度は緩めた人差し指を素早く引くや、衣織を撃った男の足から血が噴き出す。

相手は銃を取り落とし、地に倒れて転げ回った。

「あぁぁっ!!」
「お前っ」

仲間の負傷に真っ先に反応したのは、衣織の一番近くにいた小柄なリーダーであった。

腰から自身の曲刀を引き抜くや、高い跳躍で切りかかってくる。

重力を感じさせない身軽な攻撃を、衣織は銃身で受け止めるが、相手は競り合いには持ち込まずにすぐに飛び退く。

疾風の如く再び接近してきた小さな相手に、飛び道具は逆に不利であった。

しかし、元からの実力に大きな開きがある。

剣を振り上げた右の手首を掴むと、衣織はがら空きの鳩尾に膝蹴りを一発、もう一発で蹴り飛ばした。

「かはっ……!」

身に砂を纏いながら、相手は勢いよく熱い地面を転がった。

「ラキっ!」

残りの仲間は雪の操る砂を前に翻弄されていたが、その内の一人がよろめく身体で立ち上がるリーダーに走り寄った。

細身の身長は衣織よりも少し高い程度だろうか。

巻きつけられた布のせいで、やはり顔は分からない。

「大丈夫ですかっ?」
「へい、き……」

擦れた呻きと共に漏れた声を耳にした時、衣織は目を剥いた。

「女?」

先ほどとは違い、確かに声のトーンが高い。

唖然として零したとき、リーダーを抱き起こしていたその男が、物凄い眼光でこちらに視線を飛ばした。

「このっ……」

シャムシールを手に、衣織に向って地を蹴った。

呆気にとられていたせいで半瞬、反応が遅れる。

「っい」

紙一重で煌く閃光から逃れるが、砂に足を取られてバランスが崩れてしまう。

追って繰り出された斬撃を、かわすことは不可能だ。

やばい。

己が身に走るであろう激痛を覚悟するも、白刃は足元から吹き上げた砂の壁によって遮られた。

「雪!」

白銀の術師の名を呼ぶ。

助かった。

咄嗟に繰り出された雪の低級精霊が、敵との間にシールドを張り自分を守ったのだ。




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