覚醒の日。
太陽が西の彼方へ沈み、月が夜空の最も高い位置を通り過ぎた。
照明に照らし出されて浮かび上がる総本部は、足元に広がる荒れ果てた街並みなど知らぬ様子で、悠然とその尖塔に紅の旗を靡かせている。
異国の王城を彷彿とさせる壮麗な外観は、悲惨な現状において不自然なほど美しく、悪い夢のようだ。
救いの手のない暴力と略奪の市中、命令と本音に挟まれ身動ぎの出来ぬ士官、人知れず戦乱の世へ進む国家。
緩やかな破滅へ導く悪夢は、血と涙と悲鳴を待っている。
目覚めるべきだ。
この国は、目覚めなければならない。
悪夢を終わらせ現実に立ち返る刻が、今、訪れる。
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