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向こうの足はジープだった。
この時間差ではとっくに街に到着して、衣織たちについて嗅ぎまわっているだろう。
旅人の雪はともかく、自分には弱点があると分かっていたのに。
蓮璃という大切なものがあったのに。
情けなかった。
苦い感情が焦りと混じり、冷静な判断力を奪い去る。
彼女に何かあったら。
頭を埋め尽くすのはそればかりで、完璧に気が散っていた衣織は、白い地面に足を取られた。
「っ!?」
無様にもバランスを崩し、そのまま視界に純白が近づいて来る。
走る衝撃を予想したのに。
「しっかりしろ」
腰に伸びた腕によって、支えられた。
「あ……」
険しい顔つきの雪が、どこか険しい顔つきでこちらを見下ろしていた。
「無闇に走ったところで迷うだけだ。頭を冷やせ」
「けどっ」
「最短距離なら分かる」
言った雪は、微かに微笑んだ。
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