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「あの子は知っているのかしら?自分のために、大好きなお兄様が慰み者になっていること。貴方が私たちに体を預けている限り、あの子はお綺麗なままでいられるものね。蛍だなんて、いい名前。貴方の力がなければ、この島ですぐにでも命の灯が消えているくせに」
「やめ…ろ……お前が、お前が……その名を口にするなっ……っ!」

叫んだ途端、快感を煽る手が威力を増した。

呼吸を乱しながら傾いた体は、女の腕に抱き寄せられる。

豊満な胸が押し付けられても、抗うことも出来ない。

「そんなことを言っていいの?あの子くらいの力量なら、誰でも始末出来るのよ」
「はっ……っぁ」
「いい顔。ねぇ雪、雪様?私なら、あの子を狙う輩を退けられる。それだけの地位にもいるし、力もあるわ。この先、貴方一人じゃあの子を守れないでしょう」
「う……さいっ……だま……んっ」

今にも崩れそうな膝を、しなやかな地精霊の手が赦さない。

ローブをめくり、女の顔が下へと落ちる。

胸元に吸い付く唇の、その横には別の痕がいくつも散っていた。

汚い体。

何よりも汚い体。

毎日のように繰り返される、色に塗れた嫌悪すべき行為。

入れ替わるように相手は姿を変えて、時折誰を相手にしているのか分からなくなる。

最愛の少女を守るためでなければ、当の昔に雪は殺戮者になっていた。

「今でなくてもいいわ。貴方が次代になるそのときに、私を貴方の「花」にしてくれると約束してちょうだい。約束してくれるのなら、私の力であの子の安全を保障してあげる」

腹に落とされた内容に、霞がかっていた脳が冷静になった。

燃えるような内側の熱はそのままでも、廻る血が酷く冷たくなる。

少年の口元が、緩やかな弧を描いた。

「ねぇ、雪?私のことを……きゃっ!」

突如として弾け飛んだ拘束具に、相手は短い悲鳴を上げた。

こんな陳腐な術など、雪には存在しないも同じ。

ついに逆鱗に触れたのかと顔面を青くした伯母を、内心だけで思い切り罵りながら。

「ちょっ、ちょっとなに……っあ!」

板の木目に向かって女を突き飛ばし、彼女の足首を引っ張り寄せた。

肩に担ぎ上げて上体を倒す。

瞬く間に立場が逆転した事態を、組み敷いた存在は把握出来ずにいるようで、目を見開いたまま動きを止めている。

そんな標的を見据えて、少年は嫣然と微笑んだ。

「俺の「花」になりたければ、俺を本気にさせてみろ」
「なっ……んぁっ、あぁ……ぁっ」

いつから始まったのか。

堕落した日々、行為の種類も皆同じ。

相手を見下ろすか見上げるかの違いだけ。

何も変わらない、何一つ変化のない。

だってそうだ。

伯母の口にした台詞さえ、誰もが口にする言葉だったから。

妹を守れるのは、自分一人だ。




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