「すげ……」

ただ雪を動かすだけの攻撃よりも、圧倒的に破壊力の強い術に、衣織は戦闘中であるにも関わらず目を見張った。

指揮官への道のりを邪魔する輩を、次から次へと蹴り飛ばし殴り飛ばし撃ち抜きながら、随分と減った敵の数を確認する。

障害となっていた最後の一人をいなせば、眇めた碧眼で雪を睨む女と直面した。

「術師か……厄介だな」

そう零すと、彼女は目前に迫るこちらへ急に意識を戻した。

「っ、らぁっ!!」

高い跳躍から頭蓋目がけて銃身を振り下ろす。

隙を狙ったはずの一撃は、恐ろしいまでの速度で鞘から引き抜かれたレイピアによって、受け止められた。

舌打ちをする間もなく、女は衣織の腹部目掛けて強烈な蹴りを叩き込む。

「っ!!」

ぐっと腹筋に力を込めて衝撃をやり過ごし、衣織は吹き飛ばされる寸前、驚異的なコントロールで引き金を絞った。

弾道は僅かにそれて、彼女の左肩を掠めた。

「くっ」

女の眉が悔しそうに歪む。

衣織はなんとか無事に着地をすると、痛む腹を無視してすぐに攻撃に転じた。

こちらは飛び道具。

距離を保てば明らかに有利である。

しかし、それをさせてくれるはずがないと、衣織は知っている。

立て続けに二発を放つが、横飛びにかわされてしまう。

だが、相手は体勢を崩してくれた。

好機。

追撃の一発を撃ち込もうとして、はたと気付く。

カチャンッと虚しい音が、鼓膜に入った。

弾切れだ。

リロードしている余裕などはない。

すぐさま決断を下し、自分から距離を詰めた。

そのスピードに、女の目が驚愕の色と共に見開かれた。

衣織は標的の傾いた姿勢を後押しするように、銃でこめかみを薙ぎ払った。

「っう……!!」

細い体が雪の上を滑る。

命の取り合いをしているときに、レディー扱いなどをしてやる中途半端さは持ち合わせていない。

更なる追い討ちをかけようと、風のように後を追った。




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