最後は力なくさらりと口にしたが、内容は穏やかならぬものだ。

衣織は話の流れから推測した予想に、恐る恐る口を開いた。

「その、さ。情報ってまさか……」
「流石!察しがいいな、お前のだ」
「やっぱりか」

これでは翔嘩が自分を思って出してくれた条件の意味がない。

軍が管理したことによって漏洩したのだから、本末転倒だ。

呆れたように息をつけば、にっこりと琥珀が笑う。

「安心しろ。ミスった奴は死んだ方がマシだと思える処分を、現在執行中だ」
「どんな拷問だよ……」
「ガキに話せる内容じゃないんだ、悪いな」
「今ので極僅かにあったかもしれない興味が、拡散したから安心しろ。もう聞かねぇよ」

どうしてだろう。

玲明との会話は疲れる。

堪らぬ疲労感に肩を落とす衣織に構わず、彼はコンコンッとモニターを叩いた。

「でだ。そのハッカーの正体を、俺はこいつだと思ってる」
「翔……じゃない、神楽が?」

顔を上げれば、思いのほか真剣味を帯びた情報屋の琥珀とぶつかった。

「少しくらい穴があっても、他のブロックは生きていたんだ。それを綺麗に突破した相手が気にならないわけないだろ。どうにか追跡してみたんだけどな、神経質なほど痕跡を残さない。それが噂程度に聞いていた翔庵のスタイルと被った。お前からこいつの話題が出たことが、決定打だ」
「……アンタでも追えなかったって、すげぇ頭脳派じゃん」
「まぁ、はなっから俺が対応していれば、ハッキングなんてさせなかったけどな。伊達に最年少で博士号を取得した頭脳をお持ちじゃないってことだ」
「はくし?」

首を傾げて疑問符をつけた少年に頷くと、玲明の指がキーの上を滑る。

切り替わった画面には、博士号を取得した当時なのだろう。

現在よりも大分幼い顔をした神楽が、白衣姿で賞状を手に、美しい笑みを作っている映像が現れた。

「十四歳のときに、ある研究が評価されて博士号を取得。貴族で士官学校を出ずに軍入りしたのは、こいつくらいだろうな」

青白い光で浮かぶ神楽は、年齢にそぐわぬほど落ち着いた様子で、完璧な微笑を貼り付けており、衣織は「こんな十四歳っているんだな……」と零す。

眼鏡に覆われた瞳に宿った、抑揚の薄い灯。

非の打ち所のない少年は、恐ろしくもある。

「神楽は、何が評価されたんだ?」
「俺も専門外だからよく知らないが、人体におけるエレメント構造の人為的変化とか……」
「意味分かんないんですが」
「俺もだ。ただ、その結果開発されたものがあるらしい。確か名前は……」




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