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すっと手紙を差し出した相手は、郵便屋であった。
首にゴーグルを下げた柔らかな栗色の髪の少年は、笑顔で応じた。
「はいっ。お手紙でしたら銀一枚です」
「いえ、その……」
「あぁ、速達ですね!そしたら、銀三ま……」
郵便屋が最後まで言う前に、少女は彼の手に小さな袋を押し付けた。
「え?」
「レッドだ。緊急で頼む」
ガラリと変わった声音に、少年は目を見開いた。
強気な輝きを宿した黒目が、悪戯っぽく笑う。
それを見て下手に騒がず、すぐに仕事の顔に変わったあたり、流石ボーダーレスポストマンだと、少女の格好をした彼は思った。
「配達先は、どちらまで?」
囁くような問いかけには、どこか緊張感が含まれている。
亜麻色の髪の下で、少年は微笑んだ。
「ダブリア軍総本部、翔嘩皇帝……依頼者は―――衣織」
to be continued...
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