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縋るような焦燥を抱く衣織の願いは、残酷にも潰えた。
雪はこちらを、見ない。
「ここが最後の花突だった。廻る場所はもうない、旅は終わった」
「せ…つ?」
「付き合わせて悪かった」
「ちょっと待てよっ。なに……」
鳴り響く警鐘が、少年の混乱を助長する。
異常な速度で鼓動が叫んだ。
何がどうなっている。
まるで分からない。
雪の思惑が、少しも読めない。
それでも一つだけ、確かなことがあって。
息苦しい想いが津波のように迫り来て、膝が震えて仕方ない。
ともすれば崩れてしまいそうな、華奢な身体。
ドッドッと走る心音に促されるように、額に汗が滲む。
芽吹いたのは、暗雲。
嫌だ。
悪い予感がする。
嫌だ。
この予感は、予感じゃない。
嫌だ。
聞きたくない。
嫌だ。
聞いてはいけない。
嫌だ。
嫌だ。
いや………
「もう、お前は必要ない」
世界が、暗闇に染まる。
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