縋るような焦燥を抱く衣織の願いは、残酷にも潰えた。

雪はこちらを、見ない。

「ここが最後の花突だった。廻る場所はもうない、旅は終わった」
「せ…つ?」
「付き合わせて悪かった」
「ちょっと待てよっ。なに……」

鳴り響く警鐘が、少年の混乱を助長する。

異常な速度で鼓動が叫んだ。

何がどうなっている。

まるで分からない。

雪の思惑が、少しも読めない。

それでも一つだけ、確かなことがあって。

息苦しい想いが津波のように迫り来て、膝が震えて仕方ない。

ともすれば崩れてしまいそうな、華奢な身体。

ドッドッと走る心音に促されるように、額に汗が滲む。

芽吹いたのは、暗雲。

嫌だ。

悪い予感がする。

嫌だ。

この予感は、予感じゃない。

嫌だ。

聞きたくない。

嫌だ。

聞いてはいけない。

嫌だ。

嫌だ。

いや………

「もう、お前は必要ない」

世界が、暗闇に染まる。




- 276 -



[*←] | [→#]
[back][bkm]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -