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雪が捉えた光景。
透明な円柱。
何本ものパイプやコードが繋げられたその中で、淡い光が不規則に舞い上がっては気流を作り、途切れては溢れ出でる。
それは突風に煽られた花が、散り流離うようにも見えた。
硝子一枚隔てた場所には、確かに男の求めるものがあった。
夥しい量の人工物で飾られた、『花突』と呼ばれるものがあったのだ。
東国であの緑の髪を持つ男の言葉を聞いた時から覚悟していたが、あまりに惨い。
何たる冒涜か。
爆発しそうになる激情をどうにか堪え、そして雪はなけなしの理性を掻き集めると、傍らの相手に向き直る。
こんな施設など、即刻破壊していやりたい。
塵すら残さず、花突を穢した者共ごとまとめて。
平時の自分ならば呟き一つで願いを叶えられた。
上位精霊の力をもって、絶対の破壊をもたらす事が。
それでも、この疑問が解消されぬ限り雪は実行することが出来なかった。
だから吐き出されそうになる数々の台詞を、喉元で押し返す。
火澄を間合いに捕らえてから現在まで。
ずっと抱いていた疑問。
口にするべき問いを選び取った術師の唇が、開いた。
「何故、正常なエレメントを持っている?」
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