思いがけず真剣味を有した懇願に、雪は悔しそうな顔をした後。

「……悪い」
「ベツニ?さっさと行けって」

安心させるように軽い調子で答えてやれば、術師がやっと頬を緩めた。

頷きを残して踵を返した術師を見送る、刹那。

ガシャンッ!!と凶悪な音を立てて、防犯シャッターが二人の間に壁を作った。

「なっ……!?」

遮られた視界に衝撃が走る。

無機質な仕切りは衣織から完全に術師を切り離し、決して開きはしないと無言の威圧を放っていた。

「おい、雪っ!?雪っ!?」

拳で叩こうがビクともしないシャッターは、恐らくこちらの声すら向こう側には届けないのだろう。

雪からのアクションも聞えない。

図ったようなタイミングで下ろされたのだ。

誤作動ということはないだろう。

仕組まれていたとしか思えない。

「やられた……」

俯いて口にした言葉を掻き消すように、衣織の顔の横を銃弾が掠めた。

術師が居なくなったと分かるや、再び銃に変えたのだろうか。

振り返らなくとも、簡単に予想がつく。

あぁ、最悪だ。

全く最悪だ。

「おい、大人しく投降しろっ!!」

投げられる声が五月蝿い。

少し黙れ。

威嚇するように、もう一発が放たれる。

今度は足元の床に被弾した。

当てる気がないなら発砲するな。

五月蝿い。

五月蝿い。

五月蝿い。

「おい、聞いてい……」
「だぁぁぁぁっっっ!!うるせぇんだよっこのクソ共がっ!!アホみたいにバカスカ撃ちやがってっ!!!だから金持ち軍隊は嫌いなんだっ!!!」

咆哮を上げた少年に、後ろの兵士がぎょっと顔を強張らせた。

気でも触れたのだろうか。

衣織は大きく息を吐き出すと、それらを振り返った。

「俺、今すんげぇ機嫌わりぃから……気を付けろよ?」




- 259 -



[*←] | [→#]
[back][bkm]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -