「術師が入れ込んでるみてぇだから、少しからかってやるつもりだったんだよ。…けど」
「けど?」
「駄目だな、本気で殺り合いたくなった」

禍々しいほどの殺気が、通路を一瞬にして凍りつかせた。

濃密な狂気に、二の腕が粟立つ。

正気を拭い去った瞳に僅かに息を詰めたものの、神楽は平然と言葉を紡いだ。

「…清凛大佐が見たら驚くでしょうね。敬愛する碧中将の本性は、ただの戦闘中毒者だなんて」
「はっ…何言ってんだよ」
「っ!!」

可細い肩に手をかけた碧は、神楽の儚げな身体を壁に押し付けた。

突然の暴挙に瞳を瞠る。

同時に、油断していた己に胸中だけで舌を打った。

二回も同じ目に会うだなんて、とんだ醜態だ。

獰猛な光で輝くグリーンが間近で哂うのを目にすれば、苦い思いは危機感に凌駕されてしまった。

これは本当に不味い。

白い手の内側で、腱が浮いた。

「何を考えて……」
「本性なんかじゃねぇよ。どっちも俺だ」

端整な男の顔がすっと近付いたのと、彼の首に刃が当てられたのは同時だった。




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