始まりの夜。※




本当はまだ少し抵抗があった。

すべてを話したからといって、自分の穢れが薄れるわけでもないし、あまりに綺麗過ぎる白を前にして、罪悪感が生まれなかったわけではないから。

それでも強張った身体を癒すように、雪の手は少し力を入れれば消えてしまう幻を掴むような優しいものだった。

衣服が取り去られていく感覚は、心に作った厚いバリケードを一つ一つ陥落させていくようにも思えて、肌が露になれば身を守る鎧はどこにもない。

「あんま見んな」
「明かりが足りないと言ったら怒るか?」
「死期を早めたいなら言えよ」

同性の体を見て何が楽しいのか、衣織にはさっぱり理解出来ないが、術師は少年の本質を暴くように目を細める。

視線に耐え切れずに両腕で顔を覆ってしまったのは、逃げだろうか。

ふいに胸元に落とされた唇に、むず痒さを覚える。

まるで存在を確かめるように滑る雪の口は、丹念に衣織が嫌悪する己が身を蹂躙して行く。

「んっ……」

骨ばった大きな掌が胸の突起を掠め、思わず喉を震わせると、気が付いた彼が重点的に攻略を始める。

摘まれたまま舌先を這わされると、投げ出した細い足の腱が浮いた。

感覚という感覚全てが鋭敏になっていた。

どこを触られても、触れている相手が白銀の男なのだと思うだけで、堪らない歓喜が湧き上がる

じんわりと染み入る蜜が、怯える心根を解してくれる。

肉体的な快楽ではなく、心が濡れた。

「あっ……っ、ちょっ、待てっ……ふぁ……」

下肢に伸ばされた手に、衣織は慌てて雪の手首を掴もうとしたけれど、素気無く払われ捕まった。

体を間に置いて膝を割られれば、羞恥心で火が出そうだ。

「ゃ……ぁっ、んっ……っ」

甘ったれた声が居た堪れなくて、自分の手に噛り付く。

必死になって嬌声を殺す姿に、雪が苦笑を零した。

「傷になる」

そっと衣織の口元から手を外すと、薄く切れた皮膚に浮かぶ赤を吸い上げた。

同時に中心を煽るもう片方の手の動きを早めるものだから、少年の悲鳴ははっきりと部屋に響いた。

「やっ……あぁっ……っ」

背筋に走った衝撃にトクリと吐き出したことを知る。

あんまり簡単に追い上げられてしまったことに舌打ちをしたかったが、艶やかに光る唇からは荒い呼気が漏れるばかりだった。

金色の瞳でこちらを見下ろす男が何気なく翳した手を視界に入れた瞬間、深い部分がずくりと疼いた。

細長い指を持つ綺麗な手が、自分のもので汚される。




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