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すべてを奪い去るような口付けに、彼の首にしがみ付く。
けれどその触れ合いは呆気なく解かれた。
穢れた自分など、やはり好きでいてもらうことは出来なかったのだろうか。
強烈な痛みに四肢を震わせ、紡がれるであろう拒絶の言葉に萎縮した眼をそっと持ち上げれば、予想を裏切る真っ直ぐな眸とぶつかった。
「お前が何を背負っていようとも構わない。罪も咎もお前を形作る一つなら、全てを受け入れる」
綺麗な輝きが目に痛い。
与えられる言葉が胸を縛る。
その心地よい苦しさが、彼の想いが真からのものなのだと実感させる。
「愛している」
今の衣織を成すものならば、どんなことでも厭わない。
穢れも罪も全てまとめて、雪は受け入れてくれる。
包んでくれる。
愛してくれると言うのだ。
あぁ、この人を好きになってよかった。
衣織の泣き濡れた顔が綻ぶのを見届けると、雪は永遠を誓うかのように唇を落とした。
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