己の言葉を、少年は強く後悔した。

自分は彼を傷付けたのだ。

想いを疑われることが、どれほど辛いのか。

なんて不用意に言ってしまったのだろう。

そんな顔をさせたいわけじゃなかったのに。

ただ、実感が湧かなかっただけで。

目の前に置かれた輝きが、幻でないと確かめたかっただけで。

「ごめん」

無意識だった。

背伸びをして、そっと雪の目頭に唇を押し当てる。

別に涙を浮かべていたわけでもなかったけれど。

「好きだよ。……信じるから、泣くなよ」

口にした瞬間、体が宙に浮いた。

ぎょっとする間もなく、男の腕に抱えられた身が下ろされる。

背中の柔らかな感触と、見上げる雪の向こう側に天井があることから、自分がベッドに押し倒されたのだと悟った。

するりと頬を撫ぜる大きな掌に、ビクリと肩が震える。

眼前の男の面には、蕩けそうな満たされた微笑があって。

「衣織」

コツンと額がぶつかった。

滑らかな銀髪がこちらにまで零れ来る。

術師の一挙一動が、どれをとっても愛しさに溢れた行為で、あぁ本当に彼は自分のことが好きなのだと実感すると、なんとも言えぬ幸福が胸の奥を甘く痙攣させた。

あたたかく優しい真綿のような感覚にまどろんでいた衣織は、ひんやりとした掌の感触を脇腹に感じ、嫌な予感で顔を引きつらせた。

「ちょっ、ちょっと待て、あんた何考えてる?」
「お前のことだ」

何を当然のことを聞いているんだ、とばかりに返されて、少年の焦りは先ほどの比ではないほどまで加速した。

同時に心臓までも鼓動を早くするものだから手に終えない。

「待て、待て待て待て。な、落ち着け」
「落ち着いている。お前こそ落ち着け」

どうして自分が宥められているのだろう。

こちらの動揺などお構いなしに、雪の唇が軽く衣織のものを啄ばんだ。

「っ……」

もっと深いキスを地下通路でしたばかりなのに、血液が顔に集中する。

「頬が赤い」
「うるさいっ。つか、退けよ」
「俺のことを、知りたいのだろう?すべて」
「そういう意味じゃなくって……」




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