予兆。
この血塗られた両手を、何度嫌悪したことだろう。
己の未来のために、他人の明日を奪った二つの手。
嗅ぎ慣れた赤い芳香は、誰かの背中を踏みつけるたびに、少年の正気を犯そうと擦り寄って来て。
果てのない奈落へと、赤い刃で誘うのだ。
それは生存競争。
殺らなければ、殺られるだけのシンプルなステージ。
手を抜く余裕などあるはずもなくて。
この足元には、うず高く積まれた骸が横たわる。
名前も知らぬ、顔も覚えていない『誰か』の骨が。
けれど本当は。
本当に彼が手にかけたのは―――
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