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「せ、つ……?」
『違う。信用してるに決まってんだろ』
紡ごうとした言葉は、ただ彼の名を小さく呼ぶだけに変わる。
彼の眼差しとぶつかった瞬間、何も言えなくなったのだ。
見開かれた眼。
金色の眸が、まっすぐにこちらを射抜く。
驚愕と、疑念の色を携えて。
何も言えず不自然に硬直している衣織に、雪はすっと目を眇めると、まるで無機物を相手にしているかのように、少年の脇を通り過ぎて行った。
遠ざかる足音。
慌てて術師を追った香煉が、最後に嫌な笑みを向けて来たような気もするが、どうでもいい。
疑われた。
頭に生まれたのは、ただそれだけ。
高揚した気分が失墜し、耳鳴りがする。
疑われたのだ。
あの神々しいほどの光に。
信用していないのか?と、目で問われた現実に、身が引き裂かれる。
まさか、彼に疑われるなど、想像すらしていなかった。
どうすればいい。
どうすればいい。
心臓が鋭い痛みを訴える。
拒絶の金色は、いつまでも少年の脳裏から離れることはなかった。
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