紅の戦神。
世界はまるで、戯曲のようだ。
出来の悪い作家によって演出された舞台は、いつだって人の匂いが鼻を穿つ。
薄い皮膚の下。
命の光を眩く主張する、赤い流れ。
舞台上で踊り狂う死神は、手にした刃で鮮血を降らす。
観客もいない芝居小屋は彼の独壇場。
紅を被った見事な舞に、最期を迎える役者たちは誰も彼もが魅せられる。
いつしか付いた忌まわしき異名。
己が罪に囚われて、死神が刃を捨てようと。
彼の名は背後に迫り来る。
逃れることは出来ぬのだと。
そう、囁きながら。
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