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一瞬まで自身の立っていた場所に、二つの刃が刺さっている。
下卑た笑みを浮かべるのは、2人の大男。
圧倒的な体格の彼らを見ても、衣織は怯まなかった。
連携の取れていない動きで、それぞれ思い思いに攻撃をしてくる。
後ろに跳び、次の攻撃が来る前に衣織は一人の足を払った。
それは足払いなどという生易しい物では無く、粉砕するという強い意思を宿した一撃。
元から浮き足立っていた相手は、バランスを崩し面白いように雪の上に身を叩きつけた。
折れた足が奇妙な方向に曲がり、皮膚を破って骨が見えた。
ぎょっと目を見開くもう一人の顔目掛けて、無限にある白い目潰しを仕掛ける。
「うわっ!!」
子供騙しのようなそれにあっさりと引っかる一瞬の隙を突いて、衣織は男の心臓に向って引き金を引いた。
ドンッ!
聞きなれた音と共に、敵の胸に赤い花が咲く。
この寒さでもしっかりと動いてくれる相棒に、衣織は感謝した。
すぐに襲い掛かってきた三人組を相手にしながら、『彼』はどうしたかな?と視線を流した。
周囲で様子を窺う臨戦態勢の山賊、その向こうに、白銀の化身はいた。
ひらり、ひらりと優雅な動きで2人の男の攻撃を巧みにかわしている。
次の瞬間、彼の右手が動いた。
攻撃をするような動作では無く、方向を指し示すようなアクション。
だが、それは確かに攻撃だった。
「うわぁぁぁっっ!!」
「がはっ……」
二人の山賊に襲い掛かったのは、白い雪の波。
足元に敷かれていたソレは、まるで小さな雪崩のように男二人を飲み込んだ。
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