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少年の内心を読んだかのような、問いかけ。
――知りたいと思うのは、信じていない証拠なのだろうか。
今ある情報だけでは不満だと。
さらに何かを教えろと。
そう要求するのは、あの白銀の術師を信じていないということではないだろうか。
違う。
自分は信じている。
信頼している。
けれど、もっと確かな何かを。
すべてを教えて欲しい。
この感情は、雪への裏切りなのか?
指先から血の気が引き、唇が戦慄く。
違うと否定する思いと、本当に?と疑念をあげる感情がせめぎ合い、衣織を混乱の奔流に呑み込んで行く。
返事がされないことをどう解釈したのか、香煉の言葉が室内に木霊した。
「貴方は……貴方は、華真様に相応しくない」
女の非難は信じられないほど深く、衣織の身体に突き刺さったのだ。
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