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案内出来ぬ状況は、彼らにとって最大の罪だ。
それも、自分たちのせいで『廻る者』の役目を邪魔してしまったなんて。
無様な事態を露呈し、蘇次は両手で顔を覆った。
何と、罪深きことか。
「あの……さ」
黒髪の少年の声は、重苦しい雰囲気に満たされた応接室に、面白いほど大きく響いた。
二人の男に視線を向けられ、やや戸惑った風に苦笑した後、遠慮がちに言う。
「アンタら何やって王族とトラブってるんだ?どうにかして解決出来ねぇかな。……雪、どうしてもそこに行きたいんだろ?」
「……あぁ」
驚いたように目を丸くさせたまま、術師はコクンと頷いた。
衣織は安心したように息を吐くと、小さく微笑んだ。
「俺に出来ることなら協力するから、なんとかして入り込もう。な?」
「衣織……」
少年の言葉はあまりに意外で。
驚愕と同時に何とも言えぬ愛しさが内側を満たす。
この事態を理解などしていないだろうに、それでも力を貸すと言ってくれる彼。
少しだけ照れたように見上げてくる少年に、雪は優しい笑みを与えたのだった。
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