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掲げた政府発足の夢を達成するには、露草との衝突は避けられない。
世間に広まった反総領主思想と、同胞を殺害されたレジスタンスの恨みにより、最早話し合いによる解決は不可能であった。
何より、ラキ自身。
ソウと刃を交えたくはないのだ。
いつもは抱き返す腕は、青年の代わりに胸の橙の石を握り締めていた。
「ラキ?」
「翔、アタシ、は……」
何を言うのか自分でも分からないまま言葉を紡いだ時、扉をノックする音にラキは弾かれたように体を離した。
「はいっ」
慌ててドアを開いた向こうには、翔よりも更に濃い闇色の髪の少年が立っていた。
「ちょっといいか?……ってか、俺お邪魔だった?」
室内に翔もいたことから、衣織が苦笑いを漏らす。
顔を真っ赤にして首をぶんぶん振るラキの背後で、翔が小さなため息を吐いた。
「構いませんよ。じゃあ、私は行きますね」
「あ、いやっ。翔さんにも居てもらいたんだけど」
「どうしたの?」
少女に問われ、衣織は借りたジープの鍵をポケットから取り出した。
「少しドライブとかしねぇ?」
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