ナルサスの思惑 2/7
道案内のほかになにをすべきか、これを聞こうと思っていた。ナーマエはそう思い出し、尋ねた。するとナルサスは少し意外そうな顔をする。
「道案内? それはおぬし、自分の身を守るための力だろう。言えば、おれやエラムの方がはるかに地理に明るいぞ……」
思いがけない返答にナーマエは、えっと驚く。
「それでは私がここにいる意味は……」
「そうではない、それだけでないはずだ。これから殿下はパルス国の復興に奮闘される。なにが必要になるか、今だけでなく先を見るべきだろう」
諭すように言ったあと、「まあ、いずれわかるさ」とナルサスは言い添えた。
いずれ、というけれど、それでいいのだろうか。それより今は、殿下やパルスのことをよく知るべきなのか。ナーマエは漠然とそう思った。
ふと窓の方に目を向ける。夜が更けていて外は真っ暗だ。
真っ暗な窓をスクリーンに、先日起きたワンシーンが頭に思い出された。そこに、村人を気遣い、心を痛めるアルスラーン王子の姿があった。
今のこの国は、殿下の澄んだ瞳にはさぞかし濁って映るのだろう。
この国の裏の事情とはなんだろう。隠れた秘密が見えたとき、胸が叩かれなければいいけれど。
そう思いをめぐらせた時、真っ暗な夜の空に、月がぽっかりと浮かんでいることに気づいた。それと同じようにナーマエの頭に浮かんだのは、忘れかけていたまったく別の話だった。
「ナルサス、またひとつ頼みごとが」