出会いU 1/4
ゆっくりと光がおとずれた。
ナーマエは目を覚ました。
天井を見上げると、薄暗い空間に乾いた岩壁が目につく。彼女はそこで跳ね起きる。いつのまにか洞窟の中にいたのだ。
そばにいたひとりの少年が、驚いて黒い大きな目をナーマエへ向けた。
「……! ナルサスさま! お目覚めになりました」
少年はそう言うと、「どうぞ」と一杯の水を彼女に手渡した。そしてそのまま、すばやくうしろへ引きさがってしまった。
ほどなくして、よどみのない足どりで誰かがこちらへ向かってくる。
「やっと起きたか。ひさびさの再会が、まさかこんな形でなされるとは思ってもみなかったぞ」
そう声をかけてきた男は、知的な顔に強い自信をのぞかせている。
ナルサスだった。
「……ナルサス! 一体どうして? 私はパルスの騎士にとらえられて……」
「その騎士だが、命拾いしたな。おぬしはわれわれが去ったあと、この誰もいない洞窟に一人ほっておかれるところだったのだ」
ナルサスがいたずらに笑ってそう言うと、ナーマエは凍りついた。
「そうだろう? ダリューン」
「ナルサス。おぬし、底意地が悪いな」
離れたところで誰かが悪態をついた。ナーマエがそちらを向くと、若い騎士が苦い顔でナルサスを見ている。その男は先ほど森で出会った黒衣の騎士だった。
ダリューン……?
聞き覚えのある名前に、ナーマエは頭をひねる。たしかあれは……過去に王都エクバターナを訪れた時のことだ。会いさえしなかったものの、彼女はその名を聞いたことがあった。
――最年少の万騎長。
戦士のなかの戦士《マルダーンフ・マルダーン》
その異称を併せ持ち、勇名は他国にとどろくほどである――
その武人の名を思い出した時、ナーマエは今度は仰天して騎士を見つめた。そして、なるほどどうりで弓の腕が確かなわけだと、納得した。