出会いT 2/3
なんだか妙にしんとしている。後ろから呼び止める声も聞こえない。あたりには、森を進む音と馬の呼吸がするだけだった。
ナーマエは急に不安になって後ろを振り向いた。
すると、先ほどの若い騎士が、はじめにいた場所から一歩も動かずに弓に矢をつがえる姿が目にはいる。
まさか、嘘でしょう……?
そう思って呆然とした。刹那、騎士がかまえた弓の弦は矢を押しだし、その矢は、一陣の風となり、木々の並ぶ間に狙いをつけて、みごとないきおいで飛んできた。
ナーマエの背中にぞくぞくとしたものが走った。
瞬間、彼女のそばをひゅっと音がして風が通り抜ける。
矢は、彼女の頬をかすめんばかりの距離をとおって、木の幹に突き立って、ふるえた。
とたん、馬がいなないた。興奮してさおだちになる。
ナーマエはあわてて馬をなだめようとする。
「大丈夫……! おちつい――!」
ナーマエはそう声をかけて手をのばそうとしたが、はずみで鞍から振り落とされてしまう。