出会いT 1/3


「怪しいものではございません」

ナーマエはぎこちなくそう答えた。森の奥深く、日の光が木漏れ日を落とす、自然ゆたかな場所だった。



騎士たちが去ったあと、ナーマエは馬を走らせて山を降りようとした。しかしそこで山が包囲されていることに気がついた。

パルスの兵士が山を包囲する目的は、ナルサスを捉えることだった。それは裏を返せば、ナルサスがまだ森を降りていないということである。

そう気づいた彼女は、ナルサスを探して森の奥へとすすんだのであった。

やがて、小さな洞窟を見つけた。その洞窟に近付こうとしたとき、うしろから声をかけられる。ふりむくと、若い騎士がひとりたたずんでいた。

彼女の第一声は、その騎士の「何者だ」という問いへの答えだった。




ナーマエは、騎士が片手に持った長剣を見て息をのむ。

パルス兵のすべてが味方ではない。そう知ってしまった以上は、落とし穴のときほどやすやすと名乗るわけにはいかなかった。

この若い騎士がこのあとどう転んで敵になるのか、そんなこと考えもつかなかった。

彼女は手綱を引いて馬の向きを変えようとした。この場を逃げて乗り切ろう、そう考えたのである。


立ち去ろうとするナーマエを見て、騎士は眉をあげた。

「まて、名乗られよ! けがをするかもしれぬぞ」

その声はしっかりと彼女の耳に届いていたが、素知らぬふりをして馬首をめぐらせると、騎士は深く息をはいた。

馬はすぐに、山の道なき道を走りだした。

ナーマエは、若い騎士が馬を連れていたので、自分を追ってくると思っていたが、その予想は外れた。騎士はその場にとどまり追ってこなかった。

自分の馬の腕はなかなかのものであるし、この山道を追ってくるのは無理があるから、騎士は追跡をあきらめたのだろうと、彼女は思った。

追いかけてこないのならば、これ幸いと彼女は馬をあやつり、どんどん山の斜面をくだっていった。

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