落とし穴 4/7


騎士たちのざわめく声にはっとした。自分は今、泥水のたまった落とし穴の中にいるのだった。
このときナーマエは、自分はあの日の国王の命令を断るべきではなかったのだろうかと少し後悔した。

――それにしても

パルスの騎士がなぜここにいるんだろう?

彼女は不思議に思った。ここはパルスの旧ダイラム領主、ナルサスの隠れ家のはずだった。それなのに家主がいない。かわりになぜかパルスの騎士が罠にかけられている。

言葉と服装から、そこにいた六人の男たちがパルスの騎士だと気付いたので、いっそう混乱した。侵略国ルシタニアの兵士ならばまだ理解はできた。


考えていてもらちがあかない。ナーマエは決意してゆっくりと立ちあがった。

「パルスの騎士さま……。わたくしは日の国の使者でございます」

すると騎士たちはざわつき、日の国と聞いて顔を見合わせた。

「日……? 日の国と申したか……! それがまことなら、かの地からなぜここに参られた?」

ひとりの騎士が不審がって緊張した声でたずねてきた。

「国王の命令をこうむり、パルス国のお手伝いに参りました。ここに知略家のナルサスがいると聞いて訪ねたのですが……この通りです」

そう。ナーマエはこの山荘をたずねて、もののみごとにこの落とし穴に落ちたのである。

「……なるほど。日の国はパルスの友好国であるから、国王が協力を申し出られたというのか。それで、ひとりか? 仲間はどうされた?」

そう聞かれたので、ナーマエは旅の途中で仲間を失ったことを話した。そうすると心なしか騎士の緊張が薄れたような気がした。


騎士は少しなにかを考えてから、今度は丁重に挨拶した。

「これは失礼いたした、日の国の使者。おっしゃる通りわれらはパルス兵、大将軍カーラーンさまの配下でござる」

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