俺は何故、この女とカフェに来ているのか。というか、何故引きとめたのか。自分の気持ちがよく分からなかった。 先日の合コンで出会ったこの女はみょうじなまえという。実は会う前から知っていた。金髪に青い瞳、まるでフランス人形のようなその顔立ちは海明学院でもすごい噂(人気)だったからだ。会ってみるまではなんの興味もわかなかったが、いざ会ってみればどこか俺と同じようなものを感じて気がつけばみょうじサンのことばかり考えていた。なんだこれ。これじゃまるで俺が、


「…ヤマケンくん?どうしたの」


カフェの店員に案内され座ったテーブルの向かい側からみょうじサンは、俺の顔をのぞきこんできた。それにより我にかえる。しかし、そんなことは表情に出さずにメニューに視線を向けた


「…別に」

「そう?…んー、なににしよう」


そんな俺をさして気にしていないようで、みょうじサンはメニューとにらめっこしている。というかもう少し心配するとかないわけ?…って俺、何考えてんだ。出会ったばかりの人間のことなんてそんなに心配するわけないだろ。もういい、余計なことは考えないことにしよう


「アールグレイティー」

「え、なんでわかったの!わたしのお気に入り」

「いや、俺が飲むんだけど」

「そ、そうなの?てっきりヤマケンくんがわたしの飲みたいものを当てにきたのかと思った…はずかしい」


頭をかかえるみょうじサンを可愛いと思った。いや、もちろんその容姿は綺麗といえるものだが、そういうんじゃなくて、なんていうかこう内面的な?それに飲み物の好みがかぶるとか嬉しい。って何考えてんだ俺!こんなの俺らしくない。そんな俺をまたしてもみょうじサンは特に気にしていないようで、店員を呼ぶと「アールグレイティーをふたつ!」なんてオーダーしてる


「っていうかアンタ、ハーフなの?」


前から気になっていたことを話題に出してみる。するとみょうじサンはどこか悲しそうな表情になる。その様子に少し胸が痛んだ


「そう見せかけて、実はクォーターなの。母方の祖母がねフランス人で、母よりも濃く出ちゃって…隔世遺伝の典型的な例」

「ふーん」

「でもわたしは嫌いなんだ。この見た目。フランス人の血なんて四分の一程度なのに」

「そんなの。俺は綺麗だと思うけど。こんな綺麗な人間みたことない」


言ってからはっとした。何を言ってるんだ俺。恐る恐るみょうじサンの方を見てみれば目を見開いてひどく驚いているようだった。それはそうだ、俺だって驚いてるんだから。そしてタイミングがいいのか悪いのか、先程注文したアールグレイティーを二つトレーにのせて運んできた店員も驚いた様子だった。しかし今更訂正するわけにもいかない


「アンタはアンタらしく、それでいいんじゃないの」

「!、…ありがとう」


みょうじサンは小さくお礼を言うと伏し目がちでテーブルに置かれたアールグレイティーを一口飲んだ。その顔は少し赤いような気がした。そしてそれを視界に入れた俺の心臓が高鳴ったような気もした

(もしかして俺は、)



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