あの合コンから二日後の今日。日曜日で学校も休みだったため、友人に呼び出され、あの日のことを根掘り葉掘り聞かれた。彼女が聞きたかったのは専らあのあとはどうしたのか、それだった。どうしたもこうしたも、あれからすぐに別れたのだからなにもない。それを素直に伝えたがまったく信じてはもらえず、それでもなんとか説明しつづけ渋々納得してもらい、解散したのがついさっき。帰るにはまだまだ早い時間であったのでわたしはしばしショッピングを楽しもうと街を歩いた。すると前方から見覚えのある金色が見えた。その距離がどんどん近づいてゆく。あれはきっと一昨日出会った友人の好奇心の種の、


「ヤマケンくん?」


彼もわたしに気がつき歩みを止めた。今さらだけど、まさかわたしのことを覚えていないとかないよね?…ありえそう。ヤマケンくんってすごくもてそうだし、逆ナンパとかよくされてそうだし


「みょうじサン」


ヤマケンくんがそっとわたしの名前をつぶやいたのが聞こえて、覚えていてくれたのかと少しほっとした。話しかけて忘れられてるとか悲しいもんね


「ヤマケンくんもショッピング?」

「…アンタ暇?」

「え、」

「だからアンタ暇?って聞いてんの。つーか暇だよな」


ヤマケンくんの言葉の意図がわからずにわたしは首をかしげた。まさかあれか、暇人が俺に話しかけるな、という感じなのか。でも彼はそんなことを言う人じゃないような気がする。わたしが勝手に思っているだけだけど


「ついてこい。近くにいいカフェがあるから」


一昨日のようにヤマケンくんはわたしの腕をつかむと引っ張った。それがまた突然でバランスを崩したわたしはヤマケンくんの腕にしがみつくようにして歩いた。すれ違う人々の視線が痛いなか歩いても歩いてもヤマケンくんの言うカフェにたどり着かない。そして心なしか同じところをぐるぐるしているような…


「あ、あの、ヤマケンくん?まさかと思うんだけど、方向音痴…?」

「…」


無言のまま歩き続けるヤマケンくんはきっと図星なのだろう。なんだか少しかわいいな、と思って首を横に振る。だって男の子にかわいいなんて失礼なこと極まりないじゃないかわたし


「わたしの行きつけのカフェでよければ案内するけど…」


ヤマケンくんが少し不本意そうにうなずいたのを見届けると、今度はわたしが彼の手をひいて歩く。そうでもしないと彼はまた迷子になってしまうに違いないから。まったくもって他意はない。少し歩いたところで友人とよくくるカフェについた


「ここ、」

「ん?」

「俺が来たかったカフェだ」

「そうなんだ。それはよかった」


わたしが微笑めばなぜか目をそらされてしまった。なにか悪いことしたかなと不安になっていると再びヤマケンくんに腕を引っ張られた


「ほら、入るぞ」


わたしの腕を引っ張ってゆくヤマケンくんの後ろ姿から見える耳が少し赤いような気がして、わたしの頬がゆるんだ

(なんだかうれしい)



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