放課後、帰り支度をしているわたしに友人が「合コンに行くよ!」と信じられない言葉を放った。当然不本意であるわたしは不満の声をもらす。わたしは合コンが嫌いだ。なぜかってそれは、いままで誘われた合コンが最悪なものだったから。いままでの合コンの相手は必ずわたしたちが音羽女子に通っている、それだけしかみてなかったから。そんなのわたしにとってはなんの意味もない


「…いや。行かない」

「そんなこと言わないでさ!」


心底嫌そうな声で言ったはずなのに、友人は微動だにせずわたしの肩に手をおいて、なおも説得を試みている。諦め悪いなあ、なんて思いながらほんの少しため息をつく


「なまえが来てくれないとだめなんだってば!なんたって今日の相手は海明学院だよ?あんたくらいの容姿がなきゃ帰られちゃうよ。それにもうこっちは四人って言っちゃったし。だ、か、ら、お願い!」


どうもわたしは友人のお願いという言葉に弱いらしく渋々うなずく。もはやお決まりとなりつつあるこのやりとりにいい加減うんざりではあったが、友人の頼みなら仕方ない


「もうこれっきりだからね?」

「もちろん!ありがとう、なまえ!」


本当にわかってくれたのかな、このやりとりもかれこれ片手では足りないくらいにしているはずだけれども。でも本当に今日限りにしてもらうつもりのわたしにはもうどうでもいいけれど


「そうと決まったら行くよ!早くしないと待ち合わせに遅れちゃう」


足早に教室を出てゆく友人をわたしはなんとも言えない気持ちで追った。途中で他のクラスの友人たちとも合流し、待ち合わせ場所となっているらしいカラオケボックスに着いた。受付を通り、案内された部屋に入るとそこには先ほど友人が言っていたとおり、海明学院の青い学ランを着た四人の男の子たちがいた。「はじめましてー」なんて言いながら中に入ってゆく友人たちを倣ってわたしも軽く挨拶をしながら室内に入る


「あ、ほんとにヤマケンくん来てるー!」


なんて言いながら友人たちは目をハートにでもさせるかのような勢いで一人の男の子のもとへと向かった。追いかけるようにわたしもそちらに視線を向けてみれば、綺麗な金髪が目に飛び込んでくる。顔もいわゆるイケメンというやつだ。友人たちが騒ぐのも無理はない。わたしはため息をつきながら空いている席に座った。さて、これからどうしたものか。というかわたしが来た意味なんて本当にあるの?なんて考えていると、友人たちが囲んでいるイケメンの彼以外の三人がわたしを囲んだ


「ねーねー、好きなタイプ教えてー」

「金髪に青い目なんて珍しいけどハーフ?」

「っていうか可愛いね!」


これが質問攻めっていうやつか。来て数分でうんざりした。友人たちに助けを求めてみようと視線を送ってみるが、それに気がつく様子もない。というかむしろ、彼女たちも質問攻めしているんだろうな。想像してより一層うんざりした。あちらで囲まれている彼もとんだ災難だな、なんて思っていたら目が合ってしまった。その瞬間、彼はあっという間にこちらにやってきて、わたしの腕をつかむと無理やり引っ張り部屋を出た。それがあまりにも突然で一瞬で、なにが起こったのか理解ができなかった


「え、え?あの…」


いろいろ声をかけてみたが、彼はそれに一切耳を傾けずどんどん歩みを進めてゆく。そして先ほどまでわたしたちがいたカラオケボックスが見えなくなったところでやっと腕が離された。金髪をゆらし振り返る彼はやはり綺麗だと思った。わたしだって同じ金髪だというのに彼の金髪を綺麗だと思うのはなんだか変だとも思った


「えっと、ヤマケンくん?だっけ…きゅ、急にどうして…」

「山口賢二。別に。ただアンタが困ってるようにみえたからな」

「山口くん。それはあなたも同じだったでしょう?」

「ああそうだな、俺はアンタをだしに使っただけ。そういうことだから。じゃあな、みょうじなまえサン」


気だるそうに話すとヤマケンく、いや山口くんは去っていった。というか、どうしてわたしの名前を知っていたのだろう。まだ名乗っていなかったのに

(なんて不思議な彼なのだろう)



one - next

back