目が覚めると視線の先は見覚えのない天井とベッドだった
あれ、昨日あのあとわたしは一体どうしたんだっけ?かなり記憶が曖昧である

気だるい身体を起こすと頭がずきっと少し痛む
脳内を整理し、考えてみるが思い出せない。本当にどうしたんだっけ?

周りを見回しても明らかにここはわたしの部屋ではない。でもこの部屋からはなにやら嗅いだことのある香りがする。ここは誰の部屋?


「おはよう。っていっても、もう昼過ぎなんだけどね」


そう言いながら現れたのは、銀髪のわたしの苦手なあの人
今はいつものトレードマークの口布と独特な位置の額当てがないため、一瞬誰だか気が付かなかったが、すぐにピンときた


「か、かかかカカシくん!?なっ、なんで…?」

「お前ね、昨日酔いつぶれたの。覚えてないの?」


酔いつぶれた?わたしが?
残念ながら全く記憶にないから困った
でも確かにこの頭の痛みはお酒からくるものだとは嫌でもわかるので、カカシくんは嘘を言ってはいないはずだ


「でもだからってどうしてカカシくんの家なんかに…」

「仕方ないでしょうよ、俺まだなまえの新しい家知らなかったんだから。ま、知ってても俺の家に連れてきたんだけどね」

「ちょっと。前半だけ聞いてたら納得できたけど、後半聞いたら怒りが込み上げてきたんですけどわたし」


一体どういう意味だそれは
まさか変なことしてないでしょうね?
そんな疑いを込めて、自分の服装を確かめてみるがなんともなかったので安心した


「冗談だーよ。半分はね」


薄ら笑いをして軽く言うカカシくんにわたしはまたしても疑いの目を向ける


「ちょっと。それは冗談って言わないんじゃないの?」

「まーまー、いいじゃない細かい事は。それよりお粥作ったから食べていきなさいよ。久しぶりの酒で胃も荒れてるだろうしね」


なんだかんだ言って、気遣いができる人なのだ、彼は。昔から比べたら確実にカカシくんは変わった。勿論いい方向に
それもこれも“オビト”のおかげだ

カカシくんが昔のことを悔いて、考え方を改めているのはもう、とっくに知っている。なのにわたしは、


「なまえ?」

「なんでもない。頂いてもいい?」

「じゃ、持ってくるよ」


軽く頷いて、カカシくんが台所に向かうのを見送る
そうしてあまり時間をかけずにお粥が入っているであろう土鍋と、その他もろもろが乗ったお盆を持ってくる


「お待たせ」

「ありがとう」

「ま、気にするな。俺とお前の仲じゃないの」

「そうだね」


俺とお前の仲、たぶんそれに深い意味なんてないのだろう。きっと元ミナト班の仲間としてであって異性としてではないはず
そう思うとちくり、胸が痛む

え、どうして胸が痛むの?おかしいよね、それ。わたしはカカシくんが苦手なんだし、別にカカシくんがわたしをどう思おうといいじゃないか


「文句言わないなんてお前らしくないね」

「だって否定しようがないでしょう?元ミナト班の仲間として」

「俺はそんな意味で言ったんじゃないよ」

「…え?」


よく聞き取れなかったので、聞き返してみるが一向に返事がない
その代わりにふわっと抱き締められた



「え、か、カカシくん…?」

「おかえり、なまえ」


そう言うカカシくんの声はひどく弱々しくて、わたしはなぜか泣きたくなった



「…ただいま」




(高鳴る鼓動の意味をわたしはまだ知りたくなくて、)




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