わたしが目を覚ますと視界いっぱいに白い天井が広がった。あれ、わたしはどうしてこんなところに。一生懸命思い出そうと試みて、段々鮮明になってゆく記憶。そして痛む全身


「…わたし、たすかったんだ」


自分でもひどく掠れた声だと思った。でもそれは大したことじゃなくて。すぐには気がつかなかったが、両隣には班の仲間であるオビトやリン、そして我が師であるミナト先生の姿があった


「なまえ…!よかった…」


わたしの顔を覗きこむリンの顔はいまにも泣き出しそうで、申し訳なく思った。オビトやミナト先生も心配してくれていたようで、安心したような表情でわたしを見ていた。そこでわたしは大事なことに気がついた。カカシくんがいない


「かっ、カカシくんは!?、いっ」


勢いよく起き上がって身体に激痛が走る。しかしいまはそんなことよりもカカシくんだ。ここにいないということは、まさか。一番最悪な想定をしてわたしの心臓は冷えていくような感覚がした


「駄目だよ、急に動いちゃ」

「ミナト先生!カカシくんは!?」

「カカシはなまえのおかげで無事だよ」


無事、そう聞いたわたしは安堵の息をもらし、再びベッドに横たえた。あまりにも乱暴に寝ころがったので身体がまた悲鳴をあげた。でも全然苦痛ではなかった。だってわたしはカカシくんを助けられたから


「カカシ、いるよね?入ってなまえに顔を見せてあげて」


ミナト先生が病室の扉の向こうあたりに声をかけると、ややしばらくの間があって扉が開いた。気まずそうに顔を出し、近くにやってきたカカシくんの姿をとらえてわたしはほっと胸を撫で下ろした


「…よかった」


わたしが小さな声でつぶやくとカカシくんの顔は一気に強張った。その表情にわたしは少し驚く


「よくない!なまえは馬鹿だよ。俺なんか庇って、何英雄気取ってるわけ?」


なにそれ。英雄気取り?わたしが?そんなわけないのに。ただただカカシくんが大切だからわたしは。それだけなのに。わたしはなおも悲鳴をあげる身体を無視して、カカシくんの頬を平手打ちした。それは盛大な音をたてて。叩かれた当の本人であるカカシくんだけでなく、その場にいたわたし以外の全員が目を見開いて驚きを隠せないようであった


「英雄気取りなんてしてない!なんで、なんでわたしが庇ったのか少しはわかりなさいよ馬鹿!」


出来る限りの大きな声で言って、わたしは病室を飛び出した。わたしを引き留める声がしたが、いまばかりは身体の痛みも忘れ必死に廊下を走った。どうしてカカシくんはわかってくれないのだろう。そんなにわたしが嫌いなの。なんだ、わたしの気持ちはやっぱり報われないんじゃないか。それならいっそわたしもカカシくんを苦手になればいい。嫌いにはどう頑張ってもなれないから。それならせめて苦手に




(心に強くそう誓った)








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