あれっきり無言になってしまったわたしにミナト先生は声をかけてくることはなく、夜明けを迎えた。あたりに朝日が差し込みはじめて眩しかったわたしは目を細める。すると同時に、すたっと立ち上がるミナト先生


「なまえ、みんなを起こしてきてくれないかな」

「わかりました」


応えてわたしも立ち上がると、みんなが寝ている木陰に足を進めた。そこには一定距離離れた寝袋が三つ。誰一人起きてなどいなくて、あのカカシくんでさえもまだ眠っていた。距離的に一度に起こすというのは難しそうだったので、順番に起こすことにした。その中でも一番プライドの高そうなカカシくんから起こすことに決めたわたしは、さっそく歩み寄る。そっと揺り動かしてみる


「カカシくん」


わたしが名前を呼び終わるか終わらないかのうちにカカシくんはぱちっと目を開けた。相変わらずの無表情でわたしは少しだけ息を呑んだ


「朝だから起こしてきてってミナト先生が」

「…そう」


短く一言だけ返すとカカシくんは音もなく立ち上がり、寝袋をたたみはじめた。完全にわたしを無視している状態だ。これも日頃からの自分の態度のせいだとわかりきっているので別に気にしない。とはいってもやはり胸は痛む。わたしはちらっとだけカカシくんを見ると、今度はリンのもとへと向かう。彼女もまたすやすやと眠っていた


「リン。朝だよ」


声をかけると目をこすりながら起き上がる彼女を見届け、わたしはオビトに近寄る。やはりというかなんというか、オビトは爆睡状態で、揺すってもなかなか起きてくれなかった。何度か声をかけてみたところでようやく起きてくれた


「ミナト先生が呼んでる。あそこの岩の上に集合ね」


わたしは一言残すとミナト先生が待っている岩の上に向かった。そこにはすでにカカシくんがいた。カカシくんはわたしに気がついて一瞬だけこちらに目線を向けたがすぐに反らされた。わたしの胸はやっぱり少し痛んだ


「なまえ、ご苦労だったね。ありがとう」

「いえ。そろそろリンとオビトも来ると思います」


これから先ずっとこの感情を隠さなければならないのかと思うと気が遠くなった。そこからは寝不足だということもあり、あまり考えないことにした。そしてわたしたちは昨日同様に秘術の書が隠された場所へとひた走る。どのくらい走っただろう。やっと目の前に目的地が見えた


「ん、敵はいないようだね」


ミナト先生の言葉にオビトやリンが安心したように息を吐いたのがわかった。もちろんそれはわたしも例外ではない。なぜなら、いま敵に襲撃されたとして、こんなチームワークじゃ全員死ぬだけだから。そんなことを考えていると、ミナト先生は少し奥にある祠へと足を進めた。わたしたちはじっとミナト先生の背中を見つめた


「よし、異常はないよ」


先生がこちらを振り返りOKサインを出したとき、わたしの背筋にはいやな汗が流れた。敵の気配を感じたのだ。これはもはや少数ではない。すぐさまわたしは全員に目配せをした。戦闘はないはずだった。けれども、こうなった以上仕方がない。わたしたちでなんとかしなければ。もちろん、ミナト先生がいれば安心ではあるが気を抜くことは許されない。尋常ではないほどの敵の気配にオビトは震えていた。それにリンも表情が強張っていて、心配になった。とにかく先手をとらなければ。そう考えてわたしは素早く印を結んだ


「火遁豪火球の術!」


火遁はオビトやうちはのものではあったが、一応わたしも火遁のチャクラ性質だったので幾度となく使わせていただいている。それにこの術は攻撃には向かなくとも威嚇にはなるので、とても重宝していた。それを皮切りに敵は姿を現し襲ってきた


「オビト!リン!しっかりして!」


わたしの怒鳴り声にはっとした様子のふたりは、宙へ飛びのいて敵の攻撃を交わした。それと同時にミナト先生も時空間忍術で次々に敵をなぎ倒していった。わたしもなにかしなくちゃ、そんな思いでクナイ片手にひたすら敵を迎え撃った。全員の努力の甲斐あってか、あっという間に敵は全滅した。かに思えたが、カカシくんの背後に微かに敵が動いたのが見えて、わたしは考えるよりもはやく身体が動いていた。わたしはカカシくんを庇うのがやっとで、いとも簡単に敵の攻撃を受けてしまった


「…なまえ!」


カカシくんがわたしの名前を呼ぶのを聞いたのが最後に意識がフェードアウトした



(これは運命か)(それとも必然か)









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