思い立ったら吉日とは一体誰が考えた言葉なのだろう。そんなくだらないことを考えながらわたしは、火影邸へと歩みを進める
わたしが七班をやめれば丸く収まる、なんてのは自分勝手だと重々承知しているつもりだ。でも、言ってみなきゃ始まらないし
あーあ、いつからわたしってばこんな弱虫だったんだっけ?だけど、仕方ないじゃない。わたしは忍だ。そこそこ名も通っている方だとは思うし、戦い以外に弱気なのは多目に見て頂きたい
本当に自分でも馬鹿馬鹿しいと思うわ。でも仕方ないじゃない。ってわたし、さっきからでもでもばかりだ。いつからこんな言い訳くさい女になったの。いろんな事が頭を過ってため息ばかりが出た
そうこうしているうちにあっという間に火影邸の綱手さまのいる部屋の前。今更になって緊張してきた。なにをどう説明したものか。こうなった以上覚悟を決めなければ
わたしは意を決して扉を叩く
「綱手さま、なまえです」
わたしの声は心なしか震えていた。ああ、もしかしてわたし怒られるんじゃない?
「入れ」
「…失礼します」
がちゃり、少しの緊張を隠して扉を開けるとそこには様々な書類とにらめっこしている綱手さまの姿があった
「どうしたんだ?お前がくるなんて珍しいじゃないか」
わたしと目が合ってからの綱手さまの第一声は、予想だにしていなかった言葉だった。わたしが火影邸にやってくることがそんなに変だったのか、綱手さまはなおも不思議そうだ
「何か相談でもあるのか?」
「えーと、」
早速痛いところを突かれたわたしは言葉を濁すしかない。しかし、ここで挫けていてはなにも変わらない。っていうか、この原動力を他に活かせればいいのに、とか思ったのはわたしだけの秘密である
「…わたし、七班をやめたいです」
ついに、ついに言ってしまった。単刀直入すぎたかもしれない。綱手さまの反応をうかがってみると、小さくため息をつかれてしまった
「なまえ、自分が何を言っているのか分かっているのか?」
「…重々、承知してます」
怖くて綱手さまの顔を見れないわたしが俯きがちで言えば、もうひとつため息がもれた
“なるほどな”そう言いながら綱手さまは机に両方の腕の肘をつけ、顎を乗せた。なにがなるほどなのだろうか。わたしは理由など一切話していないのに
「やっとカカシを好きだって気付いたなら、わざわざ離れることもあるまい。告白でもしちまえばいいだろう?」
「…っ!?」
あまりにも突然で、わたしはその言葉を理解したくなかったが、理解するしかなかった。危うく魂を持っていかれるかとさえ思った。どうしてどうしてなんで!なんで綱手さまが知ってるの、わたし誰にもこの感情を話してなどいないのに!
慌てふためくわたしを綱手さまは薄目で見ると、再び呆れたようにため息をついた
「お前は十代の餓鬼か?まったく素直じゃないねえ」
「いやあの、」
「もういい加減素直になりな」
「…」
もうきっとなにを言っても駄目だ。そう確信したわたしは黙るしか術がない
というか本当にいつの間に知られていたの。綱手さまの言い様だとだいぶ昔から知っていたようなそぶりだけども
「というわけで、七班をやめるというのは却下だ」
半分諦めていたとはいえ、こうもあっさり却下されてしまっては、わたしも項垂れるしかない
「だが、お前には暗部の者と共に長期任務に行ってもらう。何、暗部と一緒とはいえ、簡単な任務だ。少しは気持ちの整理もつくだろう」
「え?」
「出発は明日だ。因みにお前に拒否権はない!」
(それってつまり、わたしはこき使われるということ?)
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