一楽でナルトと別れたわたしは、なぜか無性にカカシくんに会いたくなった
それはきっと昔話をしたからだ。だから、懐かしくなってカカシくんに会いたくなっただけ。わたしはそんな風に自分自身に言い訳をし、足早に歩を進める
あまり自信はないが、なんとなく慰霊碑にいけば会えそうな気がしたわたしは走り出す。そんなに急がなくたっていつだってカカシくんには会えるのに、わたしは一分でも一秒でも早くカカシくんに会いたくて仕方がなかった
本当に今日のわたしは矛盾だらけで、自分で自分に嫌気が差す。だけど今はそんな気持ちにすら構ってはいられないほど余裕がないため、ひたすら走り続ける
お願いだから、居てください。そんな祈りにも近い願いは裏切られることもなく、カカシくんはわたしの予想通りそこに、居た
「カカシくん!」
乱した息を整えることもせずわたしが声を振り絞ると、あまり間を置かずにカカシくんが振り返る
「よか、った…」
「どうしたのよ、なまえ」
未だ肩で息をしているわたしを見つめるとカカシくんは、少し驚いた表情で問う
そのときわたしはしまったと思った。だって言い訳を一切考えていなかったから。カカシくんにそう問われるのは目に見えていたことなのに。今更ながら、焦りを感じる
「まさか、俺に会いにきたの?」
「…」
カカシくんの言葉にわたしは無言で頷くしかなかった。もはや、真っ白な頭ではろくに言い訳も出来まい
わたしは一瞬俯いたが、なんだかカカシくんの反応が気になり視線を上げてみると、目を見開いて驚いている彼の顔がそこにあった
なによ、そんなに驚くこと?わたしがカカシくんに会いに来ちゃいけない?そんなことを思ったが、顔には出していないはずだろう
「珍しいじゃない。なまえが俺に会いにくるなんて」
どうやらカカシくんは嫌味を言うほど本当に驚きが隠せないようだ。ああ、やっぱり慣れないことはするもんじゃない。来るんじゃなかったとひどく後悔した
「そんな顔しちゃって。なにかあったの?」
予想外の質問に今度はわたしが目を見開く番であった。ここまできたらもう、素直に話すしかない
「…ナルトにね、ミナト先生のことを聞かれたの。それで昔のことを話したら、すごく懐かしくなって…カカシくんに会いたくなって、それで」
真実を話し出すと、なぜかゆるむ涙腺。ああ、もうどうしたんだろうわたし。木の葉に帰ってきてからというもの、泣いてばかりの自分に呆れる。よく今まで忍が務まったものだ
今度こそわたしは、カカシくんにも呆れられてしまうかもしれない。自分で呆れているのだから、きっとそうに違いない
「嬉しいよ」
「え…?」
てっきりお叱りの言葉を受けるとばかり思っていたわたしは間抜けな声を出した
嬉しい?一体どういうこと?
「お、怒らないの?」
「なーんで怒るのよ。なまえが俺を頼ってくれて怒るわけないじゃない。嬉しいに決まってるでしょ?」
最近ではもう定番のカカシくんの目を弓なりにした笑みに、とうとうわたしの涙はこぼれ落ちるのだった
「ほら、泣かなーいの」
わたしの頭を撫でる手は、思いの外やさしくて
(涙よ、止まれ!)
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