少々のハプニングがあったものの、カカシくん率いる第七班は、他の国への極秘書類を送り届けるという任務を滞りなく終えた
とは言っても、そのハプニングは任務と全く関係ないのだけど

無事に木の葉の里の入り口を通り抜けると、緊張の糸を緩める

そこで思い出す今朝の出来事
あの時は、ナルトが現れていなかったとするなら、わたしもカカシくんの腰に腕を回していたに違いない
理由は…わからない、なんてのは嘘で、確実にわたしのなかのなにかが変わり始めているからだ。そう考えると少し怖くなる

きっとわたしは、カカシくんを苦手だと思っている自分を崩すのが怖いんだろう。そこに関してはなぜなのかよくわからない


「じゃ、俺は報告書を出してから帰るから。ここで解散にするか。じゃーね、なまえ」


カカシくんは誰からの返事など聞く気もなく、瞬身で姿を消した

カカシくんめ、誰のせいでわたしが悩んでいると思っているのよ
だなんて思っていても本人には伝わるはずもなく、サクラまでもが“お先に失礼します!これからいのと約束があるので”と言い残して去っていく始末

ああ、サクラよわたしを置いていかないでおくれ

そして必然的にわたしとナルトが残る



「あれ?ナルトは帰らないの?」


ナルトのことだから“俺もサクラちゃんと行くー!”とか言いそうなんだけどな。そんな意味を込めての発言であったが、当のナルトは視線を伏せて無言だ


「…ナルト?」

「なまえさん、これから時間あるかってば?」


顔を上げたナルトから発せられた言葉は予想外のもので、わたしは少し驚く



「うん、あるよ」


特に予定もなかったわたしが素直に答えるとナルトはぱあっと明るい笑みを浮かべた



そしてナルトが大好きだというお店、一楽へとやってきた
美味しいよね、ここのラーメン。わたしも好きだ

それぞれに食べたいものを注文し、席に座るわたしとナルト


「なまえさん、カカシ先生と同じ班だったんだよな?」


ナルトは店主に出されたお冷やを一口飲むと、おずおずと言葉を発した


「そうよ。でも急にどうしたの?」

「じゃあ四代目が先生?」

「そう」

「あのさ、あのさ、その四代目ってば俺の…父ちゃん?」


まさかそんなことを聞かれるとは思っていなかったわたしは、心臓がどくどくと激しく脈を打つ。なんとなく血の気が引いていくのを感じる

仮にも上忍で、かつては暗部にもいたことのあるわたしがこんなに動揺するのも恥ずかしい話ではあるが、これには理由がある
だって、ナルトが四代目の息子であるということを明かしてはいけないということは掟ではないものの、あの頃を知る者の中での暗黙のルールだったからだ


「…誰から、聞いたの?」


わたしが動揺しているとナルトに悟られないために、平静を装う


「エロ仙人…いや、俺の師匠からだってばよ」


ナルトの師匠、伝説の三忍自来也さまのことだろうか?
だとして、自来也さまがそれを明かしたのだとしたら、認めてもよいのだろうか?


「自来也さまが…そう」


どちらにせよ、真っ直ぐなナルトの眼差しを目の当たりにして、嘘をつく気にはなれなかった


「…四代目、ううん、ミナト先生はナルトのお父さんだよ」


わたしがはっきりそう言うと、ナルトは疑いが確信に変わったというような表情になり、口許を緩めた


「なまえさんとカカシ先生と…俺の父ちゃんの班、どんな班だったのか詳しく教えてくれってばよ!」


身を乗り出し目をキラキラ輝かせながらわたしに問うナルトの表情は、やっぱりどこかミナト先生に似ていた







(ミナト先生、ナルトはこんなに大きくなりましたよ)
(見ていますか?先生)







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