「全くもう、あんなこと言って一体どういうつもりー?」


なまえさんが打ち上げに連れて行ってくれるというので、先日の居酒屋にいるのだが、先ほどのことをまだ根に持っていらっしゃるのか拗ねたようにカクテルの入ったグラスを煽っていた

ちなみにナルトはイルカ先生のところに寄ってからくるそうなので、私となまえさんの二人きりである


「それは謝ったじゃないですかー!」


そんなに怒るほどのことなのかなあ、と私は若干首を傾げる
ところでまたなまえさんのお酒を飲むペースが早いみたいだが、大丈夫なのだろうか。先日の二の舞にならなければよいのだが


「でもまあ、今日の任務は大成功だったからよしとしましょう」


どうやら許しを得られたようなので安心だ。それにしてもなまえさんはどうしてそこまでカカシ先生を苦手視するんだろう
確かに変態だということは私も認めざるおえないが、先生は先生としてかなり優秀だと思う


「ところでなまえさん」

「なあに?」


だいぶお酒が入っていることもあって、なまえさんは普段私たちと話すときより更に穏やかな口調で返事をくれた
最初に会ったときも思ったが、やはり女の私から見ても彼女は綺麗だ
カカシ先生が好きになるのも無理はない

…っと、こんなことを考えている場合じゃないんだった


「どうして、私とナルトが今日の任務の目的を瞬時に把握できたと思いますか?」

「…どうして?」


なまえさんは暫く考え込むが、答えが出なかったようでお手上げと言わんばかりに私に尋ねてくる


「実はこの任務、前にも一度やったことがあるんです」

「え?」

「それは私たちがまだ下忍になりたての頃で、初任務でした」


私が語り出すとなまえさんはグラスをテーブルに置き、私の瞳をじっと見つめてくる。そんななまえさんに気恥ずかしさを感じながらも、見つめ返す


「カカシ先生はやっぱり今日と同じように私たち三人に二つの鈴を見せました。あの頃の私たちは、本当の目的を見出だせずに一人で突っ走ったんです」


なまえさんは相槌を打ちつつ黙って私の話を聞いてくれている
きっと、なんで急にこんなこと話すの?と思われているだろう。でも、話さずにはいられなかった

どうしてだろう?それは私自身にもよくわからない


「ただがむしゃらに先生に立ち向かって、自分が、自分だけが鈴を取ればいい。あの時はそう思っていたんです」


時が経った今でもあの日のことは鮮明に思い出せる。私は目を閉じてあのサバイバル演習を思い浮かべる


「でも先生に言われました。“忍者の世界でルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされる。でも仲間を大切にしない奴はそれ以上のクズだ”って。その時に慰霊碑のことも教えてもらいました」

「それ、って…」


なにやらなまえさんの様子が先ほどとは少し違うような気がして、目を開けて視線を華さんに向けてみると、その瞳には涙が浮かんでいた


「なまえさん…?」


驚いた私が彼女の名前を呼ぶとなまえさんは、慌てて涙を手のひらで拭った


「ごめんなさい、昔のことを思い出して…。だめだよね、忍が涙流すなんて。恥ずかしい」

「そんなこと…」


もしかして話してはいけないことだったのではないかと、今更後悔している私がいた


「ねえ、それ本当にカカシくんが言ったの?」

「はい」

「…そっか、話してくれてありがとう」


なまえさんが嬉しそうにお礼を言ってくれたおかげで、私の後悔は一瞬でぶっ飛んでいったのだった






(けれど、いくら考えても彼女が涙を流した理由だけは今の私にはわからなくて、)



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