「で、一体どういうことだ」


風紀委員第一七七支部から出てきたときは、コンビニに行くはずだったのになぜかいまわたしはファミレスにいた


それも学園都市第一位の一方通行さんとふたりで

そしてなぜか彼はわたしの能力に興味があるらしい

ほんと世の中なにが起きるかわからないものである


「えーと、完璧模倣って知ってますか?」

「ワンダーレプリカ…」


一方通行さんはピンとこなさそうな顔でわたしを見つめる

きっとずっと頂点だった彼は、いままでその下の人たちの能力なんてどうでもよかったのだろう


「それがわたしの能力の正体なんですけど、簡単に言いますと他人の能力をコピーできるんです」

「コピー能力なンてのが存在するとは聞いたことがあったが、まさかテメェのことだとはな」

「なんでも学園都市のなかでもわたしだけみたいですよ。あ、ちなみにわたし第三位だったりするんですけど…」


わたしの説明を聞くと、より一層難しい表情をする彼

言いたいことは大体想像できたりする


「第三位だと?第三位ってのは確か…」

「御坂美琴。超電磁砲。常盤台のエース」


さらに表情を歪める彼を一瞥する
事情を知らなければ、まあそうなりますよね


「だったらテメェはなンなンだよ」

「簡単なことです。同率三位」

「同率だと?そンなンありえンのかァ?」


そんなのはわたしが一番疑問におもっていることだ

同率のせいでわたしは、美琴にたくさん迷惑をかけてしまった…いや、現在進行形でかけてしまっている


「…」

「おいテメェ、聞いてンのか?」

「え?あ、ごめんなさい。…ありえるから存在してるんですよ。この街は狂ってる。他人の身体を一体なんだと思ってるんだか」


わたしのせいで美琴は、妹達は、一方通行は


「ねえ、一方通行さんはその心にどんな闇を抱えているの?」


彼がどんな表情をしてるかわからない
わたしは顔を上げることができないから
だって、いまにも涙が溢れそうなの


一瞬の沈黙のあと、わたしの携帯がまたしてもタイミングよく鳴り響いた


「ちょっとごめんなさい。出させてもらいますね。…はい、こちらみょうじ」

『なまえお姉さま!?一体どこにいらっしゃいますの!?』

「…えーと、黒子?」

『どうかしましたの?なにか様子が変なような』

「ううん、大丈夫よ。どうしたの?」


黒子と電話で会話しながらも、一方通行さんの様子を伺ってみる

特にこちらの会話に興味はないようだ


『いえ、帰りが随分遅いようですので…』

「え?あ、そっか…ごめんね。もう少しで戻るから、じゃあね」

『お、お姉さま!?ちょ、お待ちくださいまし!』


黒子はまだなにか言っていたようだけど問答無用で通話を切る

あまり長電話をしていては彼に失礼だ


「相手まだなンか言ってたぞ」

「え?いいんですよ。でもわたしそろそろ行かなきゃ。風紀委員のお仕事の途中だったのを忘れてました」

「テメェ、それでもホントに風紀委員ですかァ?」


そう言われてしまうと若干胸が痛みます(一応自覚はあるつもりである)


「まあ、そう言わないでくださいよ!あ、それと、これわたしのアドレスと番号です。なにかあったら連絡してくださいね」


わたしは言いながら紙ナフキンに自分のアドレスと番号を書き記し、一方通行さんのまえに置く


「いらねェ」

「いいじゃないですか!知っていて損はしませんよ」


軽くウインクしてみるも一方通行さんは微動だにせず、わたしを見つめているだけだった


無反応というのもなにか悲しいものがあったりして




(それでは、またお会いしましょう!)
(俺はもう会いたかねェよ)
(え、なんでですか…!)



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