「あれ、わたしお邪魔だった、かな?」


当麻さんのお見舞いとお礼をすべく、病室を訪れたわたしだったが、目の前の光景に驚きを隠せなかった


なぜか、それはというとミサカの胸に当麻さんの右手が触れていたからだ


「いや、そのなまえさん!?これは勘違…」

「えーと、ごめんなさい。わたし空気読めてなくて…その、最中だったならわたし、またあとで来ますね」

「だからなまえさん!?最中って何!?あなたはなにか勘違いをなさってませんか!?」


いや、ほんとに申し訳ないことをしてしまった…
そんな気持ちでわたしは病室をあとにしようと踵を返す


「生体電気の流れから、脳波と心拍数の測定をしていただけです。と、ミサカは勘違いを正そうと試みます」


突然聞こえてきたミサカの声にわたしは、病室から出るのを中断する


「え?」

「ですから、特に性的な意味はありません。と、ミサカは付け足します」

「なるほどね!」


なんだ、そういうことだったらわたしがこの場にいてもなんの問題もないだろう


「あ、そういえば当麻さんこれどうぞ」


早速わたしはお見舞い品として持参したフルーツの盛り合わせのかごを渡す



「気遣わなくてよかったのに」

「いえ、巻き込んでしまったから…。ごめんなさい、それからありがとうございます」


おかげで美琴もミサカも一方通行も、わたしも救われた
感謝してもしきれない、そんな気持ちを込めてわたしは頭を下げる


「お礼言われる程のことした覚えはないぜ!」


笑顔で言われたわたしは拍子抜けしてしまう
もっとなにか文句などはないのだろうか
でも、そんな風にいってもらえるのはすごく有難い

だからせめてわたしも、笑顔を返す


「あ、そういえばミサカ。今後のことは当麻さんに話した?」

「いえ、これから話そうと思っていたところです。と、ミサカは返答します」

「そっか。じゃあわたしはそろそろ行こうかな」


わたしは先刻ミサカが準備してくれたイスから立ち上がる


「もう行っちまうのか?」

「はい。一方通行が目覚めるときに傍にいたいから」

「…なんていうか、お前らって…」


当麻さんは語尾に近づくほど小声になってしまって、なにを言っているのか聞き取れなかった


「え?なんですか?」

「いや、なんでもないわ」

「…?」


わたしは最後まで意味がわからなかったが、病室をあとにすることにした


「では続きをごゆっくり!」

「不幸だー!」


スライド式の扉を閉めたあと聞こえてきた叫び声に思わず笑みをもらすと、来た道を戻る


しばらく歩いたところで美琴と出くわした


「美琴!」

「なまえ!あんたもあいつの病室に?」

「うん。いまお礼に行ってきたところよ」


ふと目線を下に落とすと、美琴の手には高級そうな紙袋
きっと当麻さんへのお見舞い品だろう



「もう帰るの?」

「ううん、これから一方通行の病室に行くの」


すると途端ににやけ顔になる美琴(一体どうしたのだろうか)


「なまえさ、一方通行のこと好きなの?」

「好きだよ」


わたしが即答すると今度は驚いた顔をする美琴(さっきから忙しいな…)


「まあ、頑張りなさい!」

「美琴もねー?」

「ばっ、わ、私はそんなんじゃないわよ!」


美琴はお得意の照れ隠しでまだなにか言っていたけど、無視してわたしは足早にその場をあとにした






(でも、なにを頑張ればいいのかな)



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