たどり着くとそこは、さながら戦場のようだった
いや、本当に戦場なのだ
相手を殺さんばかりの戦い


「うそ…あいつ、一方通行相手に押してる…?」


目の前に広がるのは一方通行と当麻さんの殴りあい
美琴の言うとおり、当麻さんの方が押している


「美琴はミサカの安否確認を!」

「で、でもなまえは?」

「わたしはあそこに行く」


わたしの言葉を聞いた美琴は、黒猫を抱き締めながら怯えた表情をする


「あそこって…!あんなところに行ったら、いくらなまえでもただじゃ済まないわよ!?」

「大丈夫。わたしは大丈夫だから、早くミサカを!」


美琴は小さく頷くと、わたしとは別の方向に走り出す

…わたしも行かなきゃ


「一方通行!」


わたしは出来るだけ大きな声で叫ぶ


「!」

「なまえ!?」


二人同時にわたしの存在に気付く
その一瞬だけ殴りあいも止む


「一方通行、もうやめて。わたし言ったよね!?危ないことはやめてって…頼ってって!」

「…なまえ…」


一瞬隙を見せた一方通行に当麻さんは殴りかかる体勢に入る


「歯を食いしばれよ、最強。俺の最弱は、ちっとばっか響」

「当麻さん待って!一方通行を殴らないでっ」


わたしは、右手で拳を作り一方通行に殴りかかろうとしている当麻さんの目の前に立ちはだかる


…わたしの話はまだ終わっていないっていうのに


「!」


そんなわたしに当麻さんは間に合わない、って顔をしている

このままじゃきっと、わたしが殴られることになるだろう


「テメ、なにしてやがるっ」


ところが殴られる衝撃がいつまで経ってもやってこなくて…代わりにわたしは吹き飛ばされた


「え、」


なにが起きたかなんて状況が掴めないまま、一方通行の方を見ると彼は倒れていた


「一方通行!」


わたしはすぐさま彼のもとへと走り去り、抱きしめる


「おい、なんて面、してや、がる」


辛うじて意識を保っている一方通行に少しだけ安心する
しかし、すぐにでも意識が飛んでしまいそうだ

当麻さんのことだから、一方通行の命に別状はないようにしてくれたことだろうとはおもうが、やはり焦らずにはいられない


「ごめん、ごめんなさい一方通行…わた、わたしっ、一方通行が助けを求めてた、のに…ぜんぶ、わか、ってたのに」


どれだけ謝っても足りない
一方通行だけじゃない、美琴にも妹達にも


「俺は、なァ…謝ってほしくなンざ、ねェんだよ。わかるか?」

「で、でも…」

「なまえ、テメェは笑ってンのが一番テメェらしいンだよ。涙なンか見せンじゃねェ」


そんな一方通行らしくない台詞を言うと、彼はわたしの涙を指で拭う


「あ、あく、せら、れーたあ、」

「大体、俺は死ぬわけじゃねェンだ。心配す、」


最後まで言い終わることなく彼は、意識を手放した





(これでやっと、)



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