当麻さんが本屋に入って数分経った頃、なぜかミサカはそわそわしだした


「…どうかした?」

「なまえ、猫をお願いします。と、ミサカは猫を差し出します」

「え?でもミ、」


わたしが言い終わらないうちにミサカは路地裏へと走りだしてしまう
一体急になんだというのだ、彼女は


「…まさか!」


もしかしてミサカは一方通行を見つけて走りだしたのではないだろうか
もしそうだったとしたら…呼び止めないといけない、わたしの本能がそう告げる


「ミサカ!行っちゃだめ…!」


わたしは黒猫を抱きながら、御坂妹を追って暗い路地に入る(当麻さんへの報告は後回しだ)


少し奥まで行ったところで倒れている御坂妹を発見した
倒れている御坂妹の周りは血溜まりで、もう手遅れだというのは一目で理解できた


「ミ、サカ…」


ああ、まただ
またわたしは助けることができなかった
どうしてわたしはそんなに無力なの?



「ごめん…ミサカ、」


いまさら謝っても遅い
このミサカにはなにを言っても遅いのだ


「…一方通行」


まだ近くに彼がいるかもしれない

いまここに倒れているミサカには申し訳ないが、このまま立ち去らせてもらうことにする(きっと他の妹達がくるはずなので心配ないだろう)

問題はこの黒猫だ
この黒猫にも申し訳ないが、きっとそろそろ当麻さんが戻ってくる頃だとおもうので先程の場所にテレポートさせて頂くことにする

そしてわたしは彼を探す

しばらく足を進めると探し人である白い彼の姿が目に飛び込んでくる


「待って、一方通行!」

「…なまえ」


彼は少し驚いたような顔でこちらを振り返る
それもそのはず、彼はわたしがくるなんてまったく予想もしていなかったのだから


「一方通行、」

「わかっただろォが。だからもう俺に構うンじゃねェ」


ねえ、一方通行はいま、どんな気持ちでその言葉を発しているの
ねえ、どうしてそんなに悲しそうな表情をしているの


「構うよ…!」

「俺はなァ、一万人以上の妹達を殺したンだぜ?」

「それはあなたが望んだことじゃない」


わたしにはわかる
一方通行はそんなことできない人間だって
ただ不器用なだけで、ほんとはすごく優しい…そんな人


「はァ?なに言ってンですかァ?俺は望ンだ、望ンで殺したンだ」

「だったらどうしてそんなに悲しそうなの…?」


おもわず涙が溢れだしてくる

だめだ、わたしが泣くなんて
一番泣きたいのはきっと一方通行なのに


「…なンなンですかァ?俺に構ったってテメェにとっちゃなンの得にもならねェだろォが!なンで俺に構うンだよ」

「大切だから、一方通行がわたしにとって大切だから…だから少しくらい頼ってくれたっていいじゃない!」


わたしは一方通行に近づき手を伸ばす


反射されることなく触れた手を彼の背中に回し、そっと抱き締める

彼の体温がわたしに伝わってきたとき、どうしてこんなに一方通行を大切だとおもうのかやっとわかった気がした





(Maybe,Maybe)
(好きなのかもしれない)



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