結局わたしは、部屋に戻っても眠ることなんてできなくて、一睡もせず朝を迎えた
そろそろ身なりを整えようと机の椅子から立ち上がった刹那、扉をノックする音が部屋に響いた
「なまえ?いるー?」
「美琴…」
わたしは扉をそっと開ける
すると、勢いよく美琴が中に入ってきた
「ちょっとなまえ!一体どうしたのよ、昨日の夕食の時も出てこな…ってなに泣いてんのよ…!?わ、私は別に泣かせたかったわけじゃ…」
「…え?」
自分の頬に手のひらを当ててみると、美琴の言った通り涙が伝っていた
「え、あれ…おかしいな、泣いてるつもりな、んて…」
自覚した途端、どんどん溢れ出す涙
「まさかアンタ…」
「ごめん、美琴」
わたしが謝ると、美琴は幼い子供をあやすように優しく抱き締めてくれた
「なまえ、アンタが気にすることはなにもない。これは全部私自身のせいで、なまえはなにも悪くないんだから」
どうして美琴はこんなに強くいられるのだろう
泣いてばかりのわたしとは大違いだ
「それは違う…!」
「大丈夫、なんとかするから」
なんとか、一体どうするつもりだというのだろう美琴は
そんな方法があるなら、とっくにやっているはずなのに
「とりあえず今日さ、そういうの忘れて遊びに行かない?…あ、でも風紀委員の仕事があるか」
「風紀委員のお仕事は今日はないけど…だけど、ごめんなさい。いまは一人にしてほしい、かな」
「そっか…。それじゃ、今度一緒に行きましょ!」
「うん、ごめんね。…ありがとう」
美琴が出ていった扉を見つめる
絶対、絶対に止めてみせるから
こんな悪夢から救ってみせるから
だから、もう少し待っていて
そう決意したわたしは街へ出た
(このおもいだけは曲げない)
(絶対に曲げちゃいけないんだ)
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