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テーマ「推しとの恋」
- ナノ -


せっかくの休日だというのにわたしは、風紀委員だからという理由で学園都市の見回りをしなければならなかった

まあどうせ、休みでもすることなんてたかが知れているので、別にどうってこともないのだけど


この街になにか異変は起きてないかとキョロキョロしながら歩く

かれこれ二時間以上はこうしているとおもう
平和なのは非常によいことだとはおもうのだけど、いい加減疲れてしまった


少し休もうと試みたわたしは、友人御用達の自販機を目指すことにした(決してサボりなどではない)


しばらく歩いていると目的地に辿り着く
そこには既に先客がいた

妙に白いその人は、飲み物を買おうとはせず、自販機の前に突っ立っている
なぜ飲み物を買おうとはしないのか、だいたいは予想できる


「もしかしなくても、お金飲み込まれました?」


そんなに遠い距離でもないのに、わたしの声が届かなかったようで、見事に返答がない(まさか無視されたわけじゃないよね?)

今度こそ聞こえるようにと近くに寄ってみるも、白い人がわたしに気がつく様子もないことに少し違和感を感じながらも、白い人の肩を叩いてみようと腕を伸ばす


「っ…!」


しかし、伸ばしたわたしの腕は弾き飛ばされてしまった

そこであることがわたしの頭のなかをよぎる

さすがにここで引き下がれないわたしは、白い人の顔を除きこむ


「…」


白い彼の赤い目と目が合う
ようやく、わたしの存在に気がついてくれたみたいだ


「やっとこちらを見てくれましたね」

「…風紀委員がなンの用だ」

「あ、いや…別に風紀委員として声をかけたわけじゃ」

「あァ?」


おもいっきり警戒した目でわたしを睨んでくる白い彼

なんかちょっとショックだったり…


「もしかしなくても、お金飲み込まれたんですか?」


やっと当初の目的を果たすことができそうだ
ここまでくるのにだいぶ回り道をしたようにおもう

そして、黙ったままの白い彼を見るところ、どうやら図星のようだ


「その自販機、壊れてるんですよ。いくら飲み込まれたんですか?」

「…千円」


鋭い目付きをしているわりに、意外と素直に返答してくれる白い彼に、若干笑顔が溢れる


「はい、かしこまりました」


白い彼が不信な目で見てくるが、わたしはお構い無しに電撃を自販機にくらわせる(さすがに某友人のような蹴りはできないので、せめて電撃をお手本にさせて頂いた)

すると自販機からみるみる飲み物が出てくる


「おいおい、いいンですかァ?テメェ仮にも風紀委員だろォが」

「え?正統な方法だとおもいますけど?」


ランダムに出てきた飲み物を拾い上げながら言うわたしに白い彼は深い溜め息をついた


「選べないのが難点なんですけどね。はいどうぞ」


黒豆サイダーと書かれた缶を差し出すも、一向に受け取ってくれる気配がない


「ンなもンいらねェ」


無愛想にそっぽ向かれてしまった(なんでだろう、これ美味しいのに)


「まあまあ、そう言わないで下さいよ。一方通行さん?」

「っなンで名前…!」


心底驚いた表情をしてこちらを再び見た白い彼…改め、一方通行さん

学園都市第一位の彼でもこんな顔するんだな、と若干失礼なことをおもう

「さっきあなたに触れようとした時に反射されたので、それで」

「あァそ」

「あ、それと!申し遅れました。わたし風紀委員第一七七支部所属、みょうじなまえと申します。以後お見知りおきを」


スカートの裾を掴みおじぎをするわたしに、一方通行さんはまたしても大袈裟な溜め息をついたのだった


「そこは溜め息つくところじゃないです」

「知るかよ、ンなこと」


あまりにも無愛想すぎる彼の態度に、不満の声を漏らそうとしたタイミングでわたしの携帯が鳴った


「はい、こちらみょうじ」

『なまえお姉さま!学生が暴漢に襲われているとの情報が…今からお伝えする場所に向かって下さいですの』

「了解。至急詳しい場所を」

『お姉さまの携帯に地図を送りますので、お急ぎ下さいまし 』

「もちろん」


電話の内容は事件を知らせるものだった
携帯を切ると、怪訝そうな目をした彼と目が合う


「ごめんなさい、それ運ぶの手伝って差し上げたいんですが…見ての通り急用なので、さよならです」

「おい、ふざけンな!こンなもン押し付けンじゃねェよ!」

「では、また会いましょう!一方通行さん」


まだなにか言っている彼を無視して、わたしは携帯に送られてきた地図の場所へと向かうのだった





(これが白い彼との最初の出会い)



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