わたしが彼に近付けば近付くほど、辛さが伝わってきて
その度にわたしは自分の無力さに絶望して
どうしてわたしにはこんな能力があるの?
どうしてこの能力なの?
どうして、
例えばわたしが超電磁砲だったら?
そしたらみんな幸せ?
きっと違う、これは運命なんだ
こんな運命なら打ち破ってやる
わたしの大切な人たちが苦しむ運命なんて、そんな運命だったらいらない
わたしが、わたしのこの手で打ち破ってやる
でもどうやって?
一度部屋に戻ったものの、夕飯を食べる気にもならなければ寝る気にもならなかったわたしは、再び部屋を出た
本来ならばもう外出するのはいけない時間なのだが、いまのわたしには関係なかった
考え事をしながら歩いていたせいで、前方から歩いてきた人に気が付かずぶつかってしまった
「す、すみませ…」
「いや!こちらこそ」
ぶつかって少々痛む鼻を押さえながら顔をあげるとそこには、高校生くらいの黒髪のツンツンヘアーの男の子がいた
「大丈夫ですか?…って常盤台の制服ー!?」
「え、なぜ常盤台の制服着てるだけでそんなに絶望してるんですか?」
「…いや、知り合いがいるからというか…そいつに会うと不幸だからというか…」
「もしかして、上条当麻さん?」
わたしは別になにかの能力を使ったわけではなく
ただ単に彼の存在を知っていただけだ(もっとも相手はわたしのことなんて知らないだろうが)
一応美琴からいろいろな話を聞いていただけに、一目見ただけでピンときた
「な、なぜ、俺の名前を…?」
「えーと…美琴から話は聞いてるので…」
「不幸だー!」
急に頭を抱え、地面に座り込む上条さん(え、いまのどこに不幸要素があったの?)
「ということはビリビリが言ってた親友ってのは…」
「ビリビリ?言ってた?…いろいろ気になりますが…そうです、美琴の親友のみょうじなまえです」
美琴のあだ名はビリビリか…
ということはわたしはマネマネ?
「みょうじさんか…よろしく!ここで会ったのもなにかの縁だしな」
「あ、なまえでいいです。こちらこそよろしくお願いします、上条さん」
彼が差し出した右手を握ると、少しの違和感
その瞬間だけ、まったく演算ができなかった
これがあの、幻想殺し…?
美琴の超電磁砲すらも打ち消してしまうほどの力
「なら、こっちも当麻で!」
(彼なら救えるかも、)
(そうおもってしまった)
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