延々と彼を追いかけてやってきたのはとあるマンション


「いいマンションですね、ここ」

「そりゃ、嫌味かァ?」

「え、違いますよ…!」


ただおもったことを率直に述べただけなのに、嫌味にとられてしまっては心外である

少々彼にはひねくれた部分があるとおもう(でもそれを含め、魅力的なのだけど)


「常盤台のお嬢さまなンだろ?オマエ」

「え?そんなことないですよ?普通です、普通」


なぜ世間では常盤台中学に通っているとお嬢さまになってしまうのだろうか


たしかに本物のお嬢さまの在籍しているだろうが、わたしはただレベル5だからあそこに通っているだけだ


「それにわたしの見た目も、お嬢さまとは程遠いとおもいますけど…」

「テメェはテメェがおもってる程凡人じゃねェぞ」

「え…それってどういう…」

「能力とか見た目とか言ってンだよ、わかンねェのかァ?みょうじさンとこのお嬢さまはァ」

「えーと…」


それはつまり、一方通行さんなりの誉め言葉なのだろうか?
そうなのだとしたらとても光栄だ
なにより、一方通行さんがわたしをそんな風に見ていてくれたというのが嬉しい


「ありがとう、ございます…?」

「くっだらねェ」


自分から言い出したというのに、彼は興味ないとでもいうようなニュアンスで言った(せっかくでれてくれたのに…)

そして彼の部屋の扉の前にたどり着くと、鍵を開けて中に入る


「ここが一方通行さんのお家…。お邪魔します!」


わたしのつぶやきを無視すると彼は一目散にソファーに行き、寝そべる


「あれあれ?そういう感じですか?」

「なにがだよ」

「そういうつもりでわたしを呼んだんですか?そうですか、そういうことですね!」

「はァ?テメェが勝手に着いてきたンだろォが!ったく馬鹿ですかァ、なまえちゃンよォ」

「あら?意外とピュア!というか、下の名前も覚えててくれたんですね!」


わたしはソファーに寝そべる彼の顔に自分の顔を近づける

あまりに至近距離すぎて、お互いの息がかかりそうだ


「テメェ、おちょくってンのかァ?この俺を」

「あは、ごめんなさーい」


あまりやり過ぎてしまうと、今度こそ殺されかねないので早めに顔を離すとこにする


「でもこのくらいの復讐してもよくないですか?」

「復讐だァ?」

「だって、せっかく連絡先教えて差し上げたのに一切連絡くれないんですもの…」


そうなのだ
わたしは一方通行さんが一向に連絡くれないことがすごく気に食わなかった


それがわたしの勝手なわがままなのはわかってはいるのだが、一方通行さんにも友達だとおもってもらいたい気持ちの方が強いのだ


「用もねェのに連絡する必要がどこにある」

「用がなくても連絡してほしいのに…」

「いちいちうるせェな、テメェは!登録してやったンだ、それで充分だろォが!」

「え、登録してくれたんですか!?」

「…」


不味いことを言ってしまったとでも言いたげな表情をする一方通行さんを不覚にも可愛いとかおもってしまったわけで…




(友達だって言ってくれなくても、いまはこれだけで)



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