任務に出発する少し前、わたしは準備万端にし、いつも身につけている額あてを磨いた。初めての里外の任務なので、わたしが忍だという証をぴかぴかにして出掛けたかったのだ。そしてそろそろいいかというとき、不意に玄関の扉が叩かれた。あまりに突然のことで身体がびくりと跳ねて、外の気配を探る。するとその正体はわたしの最もよく知る彼のものだった。
「ミナト?どうしたの?」
玄関の扉を開けるとそこには、にっこりと笑顔を浮かべたミナトが立っていた。どうしたんだろう。わたしはその言葉のとおり首を傾げた。
「門までなまえと一緒に行こうと思って迎えに来たんだ」
「そうなの?ありがとう」
ひとまずお礼を言ってからわたしは「ちょっと待っててね」と部屋へ入り、先ほど準備したリュックと額あてを手にして再び玄関に戻った。
「お待たせ!」
「なんか急がせちゃってごめん」
「全然そんなことないよ。ちょうど出ようと思ってたところだから!」
「ん、ならよかった」
そう言ってミナトは綺麗な金髪を揺らし微笑んだ。やっぱりかっこいいな。なんて思ってすぐになにを考えているんだと頭を振る。これから任務なんだから、と自分に言い聞かせる。
「あれ、額あてどうしたの?」
ふたりで連れ立って歩きながらわたしは、外したままだった額あてを身に付けているとミナトは不思議そうに問いかけてくる。
「これ?初めての里外任務だから気合い入れてぴかぴかにしてみたの!」
「そうだったんだ。俺もやればよかったな」
「いまからでも間に合うんじゃないかな?」
そんなことを話しているとあっという間に集合場所である門の前についてしまった。一人でくるには長く感じるのに、ミナトとふたりだと短く感じる。それはなぜなのか、考えて少しだけ自分の気持ちに気がついた。わたしはきっとミナトが好きだ。もちろん、恋愛的な意味で。いま急に自覚してしまったせいで妙に意識してしまう。隣を歩いているミナトをそっと盗み見た。
「自来也先生もチヒロもまだみたいだね」
「あ、う、うん。そうみたいだね」
盗み見ると言ったけれども、実質見つめていたわたしは急にミナトがこちらを見たことに少しばかり焦ってしまった。しかし、当のミナトはわたしのその様子に気がついていなかったようだ。これから重要な任務だというのにこんなので大丈夫なのかな、ふと不安になった。
(でもミナトと一緒なら大丈夫)(そう思ってしまうわたしは結構重症なのかもしれない)
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