ふと目を覚ますと見慣れた寝室の天井。あれ、わたしいつ帰ってきたんだっけ?というか、昨日なにしていたんだっけ?どうやら思考回路はまだ寝ぼけているらしくなにも思い出せない。

ややしばらく考えてから、右側に違和感があることに気がつく。いや、違和感というよりも第三者の暖かい温もりと懐かしい香り。

「…え」

視線を右にずらすとそこにはミナトがいた。ずっと会いたかった大切な人が、わたしに抱きつくようにして寝息をたてている。え、うそでしょ?もしかしてわたしってばまだ夢を見てる?ミナトに会いたくてこんな夢を?

身体をミナトのほうに向けて寝顔をまじまじと見つめる。端正な顔立ちは最後にあったままなのに、身体つきは男らしく成長しているのが妙にリアルで、こんな夢ならずっと見ていたい。

「ミナト、ずっと会いたかった」

そうつぶやいてからわたしは、夢なのをいいことに大胆にミナトの胸に顔をうずめて精一杯その懐かしい香りをかいだ。

「ん、俺もだよ。なまえ」

最後に聞いた時よりもやや低くなった声がわたしを呼んで胸が高鳴った。見つめ合うわたしとミナト。

「これが夢じゃなくて、現実ならいいのに」

「ん、紛れもない現実だよ」

「え?」

いま間違いなくミナトは現実って言った。うそ?本当?本当に夢じゃない?
わたしは軽く混乱しながらほっぺをつねってみた。あまりにベターだけど、これしか方法が思いつかない。

「い、痛い」

「ね、言ったでしょ。昨日のことおぼえてない?」

「昨日のこと?」

「ん」

昨日?昨日はたしか。そうだ任務あけに綱手先生と一緒に居酒屋に行って、ミナトのこと聞かれたんだ。

「もしかして」

「綱手先生に無理やり居酒屋に連れていかれたでしょ?俺も自来也先生に連れていかれてね。すぐになまえに会いたいのにって思いながらついていったら驚いたよ」

「ということは…!」

やっとのことでわたしはことの重大さに気がついてがばっと起き上がった。

「ミナト、本当にミナト…!」

「ん、ただいま。なまえ」

「おかえり、ミナト」

「せっかくだし、もう少しこうしてていい?」

ミナトは返事を聞く前にわたしの腕を引っ張り、再び抱きしめた。さっきまでは恥ずかしさよりも嬉しさのほうが勝っていたからよかったけど、現実だと気がついてからは心臓がうるさく音をたてて、ミナトにも聞こえるんじゃないかとおもった。

「なまえ、愛してるよ」

「わたしも愛してる」

「やっと言えた」

そう言ってミナトは微笑んでからわたしにやさしく口づけをした。何度も何度もついばむように。

(そうしてわたしたちはもう一度幸福な眠りについた)



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