約四年間の修業を終えて、俺は自らの師である自来也先生と共に木の葉の里に帰ってきた。この四年間で俺はだいぶ大きく成長したつもりだ。新しい術もいくつか習得した。もちろん、あのクナイを用いた術も。

そして何より今はなまえに会いたかった。四年間も待たせてしまった俺の愛しい人。彼女はどんな美人になっただろう。前よりももっと綺麗になったであろうなまえを想像して胸が高鳴る。出来ることなら今すぐにでも会いに行きたかったが、それを自来也先生が許してはくれなかった。

「ミナト、これから少しワシに付き合え」

「え、いやでも…」

「なーに、お前にとっても悪い話じゃないんだがのォ」

まさかこの四年間俺に付きっきりで修業をつけてくれた師を蔑ろにも出来ず、黙って頷きついていくことにした。向かった先は居酒屋。正直、悪い話しかないんじゃないかと思ってしまった。どうしてこんなところに。思っても口には出せなかったが。

店内に入ってゆく自来也先生の背中を重い足取りで追いかける。入ってすぐ、自来也先生は足を止め、俺に待ったの合図をかけた。一体どうしたのだろうと、その背中からあたりをうかがってみれば見知った後ろ姿が見えた。あれはたぶん綱手先生。

綱手先生とは修業に出る前に何度か一緒に任務をこなしたことがあるし、見間違えではないはず。それではその隣にいるのは?視線を向ければ高鳴る心臓。あれは恐らく、いや絶対になまえだ。しかし当のなまえは全く俺に気がついていない様子だった。

「あれから何年になった?まだ帰ってくる様子もないし、いい加減待つのはやめたらどうだ?」

ふと聞こえてきた会話についつい耳をすませてしまう。いい加減待つのはやめたらどうだ?言ったのは綱手先生。それはすぐに自分の話題であるとわかる内容で。なまえから返ってくるものがもし、否定的な言葉だったら。

そう考えるといてもたってもいられなくなって駆け出そうとしたが、呆気なく自来也先生に止められてしまう。そのおかげで少しは冷静に考えることが出来た。彼女から否定的な言葉が出ることなどありえない。それは俺に自信があるとかそういうことではなく、約束をしたから。

修業に出るときに俺はなまえに自分に待っていてほしいなんて言う資格はないと言ったが、なまえは待つなと言われても待っているから、そう言ってくれた。その言葉を聞いたとき、きっとなまえも俺と同じ気持ちでいてくれたのだと思った。だから俺は本当は帰るまで待っていてほしいなんて言えたんだ。

「…やめません。これから先、あと何年、たとえ何十年ミナトが帰ってこなくても待ち続けます。……わたしはミナトを愛しているから」

そしてなまえから発せられた言葉は、予想を遥かに上回るもので。俺は思わず赤面してしまう。まさかなまえから愛してるなんて聞けるとは思ってもみなかったから。

「ほう?まったくのろけるんじゃないよ。こっちが恥ずかしい。な?ミナト」

俺と自来也先生の存在にとっくに気がついていたらしい綱手先生は、こちらを悪戯っぽい瞳でにやにやと見つめてくる。そして俺は更に赤面した。

すると同時になまえがテーブルに突っ伏した。俺は思わずあの術を使ってなまえの元へと瞬間移動し、その肩を抱いた。

(残念なことに彼女は俺の存在にきづく前に気を失っていた)



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